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第28回■■投機から投資へ

先日久しぶりに証券会社の残高をチェックしてみたら、塩漬け中の全日空、含み損が15万円を超えていた。このまま下がり続けたら含み損額が月給の手取額を超えると思うと、一瞬猛暑も吹き飛んだ。

そろそろ反発してもいい頃だと期待しているが、一方で、今までの短期売買を見直してみようとも思っている。

これまで私は数円上がったらすぐに売ってしまい、少額の利益を積み重ねる方法で取り引きしてきた。投資というよりも利ざやねらいの投機。銘柄は、とにかく取引高が多くて一日のうちの値動きが激しいもの、という条件に当てはまるものを機械的に選んだだけなのでろくに企業研究もしていない。業績の見方もよく知らないし、ROEとかPERとかいう色々な指標もちんぷんかんぷん。

調子がよかった頃はそんな自分に何の疑問も抱かなかったが、塩漬け街道まっしぐらで行き詰まってきた昨今、ピーター・リンチという人の書いた本を立ち読みして少々考えが変わった。伝説のファンドマネージャーと言われる人である。ざざっと立ち読みしただけだが、強調されていたのは「その会社のオーナーになるつもりで銘柄を選ぶ」という意識だ。

なるほど、株を買うということは、自分の大切なお金を経営者に託すということである。せっかく託すなら経営者の方針や事業内容に共感できる企業にしたい。一緒に育てて大きくしていくという感覚がもてる企業にしたい。そんな企業が見つかれば、成長するのを見守ろうという姿勢で、長く株主としてつき合えるだろう。

遅ればせながら、まずは応援したい企業探し。最初に買う銘柄は、自分や周りの人が勤めている会社など馴染みのあるところがいいというアドバイスもあるが、残念ながら自分も周りも株式公開している会社とは縁がない。この会社が作っている○○は絶対買う、というこだわりも特にない。あの会社いいな、とすぐにピンとくるところはなかなか思い浮かばないものだ。具体的に企業名は思い浮かばないものの、こういう姿勢の企業なら応援してみたい、というのはある。

私は、これからの世の中、モノを増やすばかりが能じゃないと思っている。エルメスやヴィトンを手に入れて得られる満足感と同じくらいか、もしかしたらそれ以上の満足感が、もっと他のことで得られるかもしれない。目の前に自由になる一万円があったとしたら、どう使うか。目に見えるモノと引き替えるという選択肢だけではないはずなのに、今まで長いこと他の選択肢はこの日本では日の目を見ることがなかったように思う。

お金と時間の使い方の選択肢を広げる。何とも漠然としているが、そんな動きの後押しをするような事業をしている会社はないだろうか。是非応援したいのだ。

2001.08.13
◆CANE

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