大橋巨泉といえば、「11PM」、「クイズダービー」、「世界まるごとHOWマッチ」などの人気テレビ番組の司会者というイメージが強いが、元々は1960年代頃からのジャズ評論家である。彼は人気の絶頂であるにもかかわらず、10年前にすべてのテレビ番組を降板。現在悠々自適の生活を送っている。
テレビでしたいことをし、そしてあっさり退いてしまうそのライフスタイルが注目を浴び、最近ではよくテレビに再登場している。その姿は往年の時とまったく変わらず、若々しいのはさすがだ。そういえば11PMでいっしょにボケた司会をしていた朝丘雪路さんもお若い。
大橋巨泉は根っからのテレビマンだ。当時の世代にアピールし、彼自身の生活が視聴者の生活と密着しているように見え、非常に親しみがあった。土曜日の午後3時半(?)からやっていたビートポップスは、まだテレビが白黒であった頃の番組だが、若い世代に向けての音楽番組としては画期的であった。当時の出演者には藤村俊二や小山ルミがいたが、このころから藤村俊二はなぜかオヒョイと呼ばれていた。
ボウリングが流行った時期は自らもボウリングにのめりこみ、中山律子さんや須田加代子さん(故人)と一緒に投げるなど和気あいあいとした雰囲気も親しみが持てる。
11PMに至ってはもはや彼無しには語ることが出来ない。11PMは夜11時からの大人の番組だが、イヤラシイ部分と、アカデミックな部分とが混在した不思議な番組だ。ベッドで女性が悩ましく体操をしていると思ったら、釣りの場面もあるし、がーガイダンスなどという車を紹介する場面もある。かと思うと無名の新人のR&B歌手をつれてきて歌わせるようなところは巨泉ならでは。ちなみに和田アキ子さんが歌っていたのを見たことがあるが、この頃の和田アキ子さんは見た目はモロ不良。しかし歌はうまかった。
視聴者と電話をつなげ同時進行でクイズをやるのも画期的だったと思う。何しろ始まった頃は電話の普及率は100%ではなかったはずだ。巨泉氏と朝丘雪路さんがサラブレッドで視聴者をジョッキーに見立てたクイズは、その後のクイズダービーの原型とも言えるもの。
4月に出版された「巨泉・人生の選択」(講談社)が売れているという。巨泉氏の生き方に学ぼうとする人がこぞって読んでいるそうで、同書は1ヶ月で24万部を突破。大手書店でも品切れが相次いでいるという。巨泉氏のように好きなことをやりたいけれどなかなか出来ない人も多いと思う。しかし、好きなことをやるにはそれ相当の準備が必要で、その準備をしておけば不可能なことでもない。40歳になったら好きなことをやれ、といわれるけれど、ちょっと遅れて50歳、60歳でも良いと思う。好きなことをするために今ひとつちょっとがんばってみようか。