鉄は自然界では鉄鉱石や砂鉄として存在しています。この鉄鉱石や砂鉄に含まれる鉄は酸素と結びついていわゆる酸化鉄として安定した状態を保っています。
酸化鉄はそのままでは役に立たないので、酸化鉄から酸素を取り除いて純度の高い鉄を取り出す必要があります。そこで登場するのが炭素です。炭素は鉄と強固に結びついている酸素をはがして自分と結合して炭酸ガスになります。こうして得られる鉄は最初30%まで含まれていた酸素が0.0005%までに減り、純度の高い鉄になります。この工程を精錬といいます。
ところが、こうしてできた鉄ですが、酸素は減ったものの今度は酸素の代わりに炭素が混じってしまっています。鉄は炭素を含みますと硬くなりますが反面もろくなります。そこで、今度はこの炭素を取り除いて、代わりにモリブデンやタングステン、クロムなどを人為的に加え用途に合った鉄を作り出します。この工程を製鋼といいます。
一口に鉄といってもその用途によって色々な鉄が存在します。普段私たちがお世話になっている刃物や建物の鉄筋などは、ハガネといわれる種類の鉄です。
鉄はその炭素含有量によって分類されています。
炭素含有量が0.08以下 鍛鉄・軟鉄
炭素含有量が0.08~2.0% 鋼(ハガネ)
炭素含有量が2.0%以上 銑鉄・鋳鉄
軟鉄は柔らかく焼き入れしても硬化しないので刃物にはなりません。しかし刃物を支えるにはうってつけで日本刀の刀身は軟鉄でできています。柔らかいから折れたりしません。
銑鉄・鋳鉄は硬く脆く、いわゆる鋳物がそうです。マンホールのふたやダルマストーブなどに使われています。衝撃を加えますと割れたりしますので要注意。
包丁などでお馴染みのステンレス鋼は普通鋼にはクロムを加えて錆びにくくしたものです。また研ぐ必要の無い剃刀はニッケルやモリブデンを加え硬さを増し、切れ味と耐久性を追求したものです。ちなみに剃刀の刃は折れたり割れたりするので注意してください。
通常家庭で使う包丁は、あまり硬いと研ぐのが大変なので、なるべく普通鋼に近いものを選ぶといいと思います。家庭用のステンレスの包丁は錆びなくて便利ですが、硬いので研ぎにくいのが難点です。
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