ビルの前を通るとその壁に「定礎」と彫り文字されているのを見ます。何気なく通り過ぎてしまっていますがこれはそのビルの礎(いしづえ)となる大切な石なのです。
定礎石はビルやダムの建設中に行われる「定礎式」で建物に据え付けられる石です。仕上げの時期に行なうものでこれで完成ではありません。完成したときには竣工式をとりおこないます。
「定礎式」は建物の仕上げの時期にこれまでの工事の無事を祝い、完成までの安全、建物の永遠の無事やその会社の興隆発展を祈願するものです。
元々は石積み建築が本家のヨーロッパではじまったもので、石造建築の基準となる隅の礎石を鎮定する儀式=Corner Stone Laying Ceremony に由来しています。
ところで定礎石の下には定礎箱が埋め込まれるのが本式です。定礎箱は鉛でできており永年の腐蝕に耐えられるようになっていて、中には氏神様のお札、建物の平面図、当日の官報・新聞、通貨、社史などが納められます。ちょっとしたタイムカプセルですね。ただし、見られることはありません。もし見えることがある場合はそのビルが壊れた時です。
定礎石は据え付けられる場所もちゃんと決まっていて、建物の場合は東南の隅に鎮定されます。もしビル街で迷った時は格好の羅針盤になるでしょう。殺風景なビル街の片隅にもこのように建物にかかわる思いが込められていると思うとちょっと心が豊かになりますね。