衆院選と同時に最高裁判所の裁判官についての国民審査が行なわれました。衆院選は事前に候補者の情報が流れてきますし、有権者はその中から情報を取捨選択できますが、どうもこの国民審査については情報が少なくて戸惑います。審査は罷免したい人に×をつけて罷免を可とする方法。つまりやめさせたい人をやめさせる、というものです。
自分の一票で罷免(やめさせる)すると言うのはあまり気持ちのいいものではありません。悪いことをしたのならともかく、裁判官ともなれば法律については一応エキスパート。我々凡人の頭脳の及ぶところではありませんし、また裁判官とて人の子、その人にとってみれば生活がかかっているだろうし、それよりも罷免するには情報が少なすぎます。
投票と言うのはもともとは「推薦」することが目的であって、やめさせる場合は推薦しないわけだし、罷免ではなくて、やらせたい裁判官を選ぶ投票のほうが望ましいし、それがまた自然であると思います。
なぜこのような制度になっているのかと言うと、これは憲法79条で定められているからなのです。第79条には「最高裁判所の構成等」として、裁判官は裁判長を除いて内閣が任命することや、任命後初めて行われる衆院選、またその後10年後を経過した衆院選で審査をすることになっているからです。審査の方法も「罷免を可とするもの」となっており、選び出す性質のものではありません。「選ぶ」のはあくまでも内閣なのです。
ところでこの審査で罷免された裁判官が過去いたのか?というと、これまで18回の国民審査で罷免のケースは一回もありません。しかし開票結果を見ると1割ほどの人が罷免する意志があるというのも面白いことですが、いずれにしても形だけの審査という現行方式を今後変えていく必要はありそうです。