消費税が導入されたのは1989年(平成元年)。その際には価格表示方法の規制は設けられず、駅の売店や自動販売機は内税方式をとる一方で、「内税では税を価格に転嫁しにくい」と外税方式を採用する小売店も多く存在することとなりました。
しかし消費税などの付加価値税の歴史が古い欧州では、消費者保護の観点から税込みの総額表示を義務付けている国が多く、外税方式では税額がわかりづらく一体いくら払えばいいのか、という問題があることは否めません。そこで今回消費税法の一部が改正され、消費税の総額表示義務が平成16年4月1日から課せられることになったのです。これは消費者の立場に立った改正であるといえます。
しかし、反論もあります。総額表示にすれば流通業の多くの小売店はレジシステムを変えなければなりません。また出版業界のように、価格印刷済みの多くの書籍が出回っているような場合は商品を回収し、新たに出荷しなおさなくてはなりません。消費税総額表示の趣旨は理解できるが、なぜ今それをやらなければならないかの、反感はどの企業にもあるようです。
今回政府がこのような改正を行なった本当の狙いは、消費税を今後上げていかなければならないという現実に備えた「消費者向けの目くらまし」という目論見があるようです。
現在消費税は5%ですが、これを30%くらいまで上げる予定だと言われています。この税額が消費者に対し常時公表されるとしたら、収税はやりにくくなるのは目に見えています。
また消費財にによって税率を変えるという案もあります。その場合には商品によってレジで打たれる税額が変わることとなります。当然、レジ場での確認のやり取りや、打ち間違い、クレームなどが発生する惧れもあります。総額表示はそれらを一気にうやむやにする作用がありますから、レジ場でのトラブルはなくなるでしょうが、同時に消費者の税負担意識は薄れます。
税額に気が付かない例としてガソリン税があります。ガソリンにかかっている税金は現在は内税で、1リットルには「原油関税…0.215円」、「石油税…2.04円」、「ガソリン税…53.8円(うち揮発油税48.6円+地方道路税5.2円)」。
さらに、これらの税金を含んだ価格にさらに消費税がかかります。これを全部表示したら、世論が黙っていないでしょう。しかし実際にこれだけの税金を払わされているのです。財務省はこれらの税金は、製造業者に課せられているいわば原価にあたる部分であるとして、消費者には公表しないでいい、という解釈らしいです。
わかりにくい例として酒税も同様です。発泡酒をめぐるメーカーと国税局の攻防は記憶に新しいところです。多額の税金が課せられているのにそれに甘んじているのは、税額をはっきり表示していないからです。国民はもっと内情を知るべきですし、知らさなければなりません。
いずれにしてもまもなく消費税は総額表示になります。98円、980円、1980円といった値ごろ感を出すような数字や、100円ショップの行方が気になるところです。