コオロギやゴキブリ、小さい魚やねずみなどのいわゆる下等生物は、大量に飼育し食料が不足しますと平気で共食いを始めます。最初は死んでいる仲間を食い始めますが、それも足りなくなると生きている物同士で食い合いを始めます。ある一定の生活密度を超えるとやむを得ずこういう状態になりますが、通常は生活範囲を広げるため移動するなどして、共食いはしないのが普通です。
同じ生物として生きたままの共食いはネガティブな行動です。種は増えることを目的としており、またそれが本能として植えつけられているわけですから、仲間を食ってまで生き延び、種を守るということはあるものの、本来は避けたい手段であるわけです。
しかし食欲は生物の三大欲であるわけで、腹が減ったらそりゃ仲間だろうとなんだろうと食べてしまう欲望はあります。それを抑制するために、DNAはある指示を「自らの設計図」に書き残したのですね。
それは「異常たんぱく質製造」です。正常なたんぱく質は酵素でアミノ酸に分解され、私たちの栄養源になります。ところが異常たんぱく質は酵素で分解されないので、それを摂取し続ければどんどん溜まります。その結果致命的な病気を引き起こします。
この異常たんぱく質は、共食いをすると発生し、共食いを続ければ致命的な病気に係り、結果的に共食いをさせないように働きます。こういった異常なたんぱく質の製造まで設計図に組み込んでいるDNAは本当にたいしたヤツです。
ところで、ここまで聞いてピンときた人も多いでしょう。そう、BSEいわゆる狂牛病がこれです。牛や羊に同じ仲間の肉が入った餌を与え続けると防御的に異常たんぱく質のプリオンが発生し共食いを止めさせる為に病気を発生させるのです。世界には人食い人種がまだ存在するようですが、その人種にも共食いによる異常たんぱく質に起因する同様の神経疾患が確認されています。
アメリカ産の牛肉輸入がストップし、日本は混乱していますが、そもそもこういった共食いをさせるようなことをして発達してきた産業自体を見直さなければ問題は解決しないでしょう。しかしつくづく自然の力は人知を超えて偉大だと感心してしまう今日この頃です。
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