中高年の登山が人気です。しかし一方で、その中高年を含むパーティの遭難も多くなってきています。登山で遭難する場合、天候の急変が主な原因となりますが、中高年者はその急変に体力的に耐えられないことが直接的な原因となっているようです。熟達した登山家は、いかなる場合でも体力を温存する方法に長けています。これは修練と熟練でのみ得られる技であり、にわか登山家がまねできるものではありません。
私は若いときはスキーをやっていましたが、ホームゲレンデである八方尾根は最終リフト降場からさらにスキーを担いで登れば北アルプスの唐松岳にまで登頂可能なゲレンデです。天候がよければそれは絶景・快適ですが、ひとたび天候が変われば過酷な冬山登山に変貌します。軽い気持ちで臨めば遭難することもあります。
スキー中にゲレンデで知人が遭難した例もありました。猛吹雪で前後不覚となり、ゲレンデ内を徘徊し挙句の凍死。天候が晴れて、発見された場所はなんとリフト小屋の脇でした。山の天気をなめてはいけません。
さて、話を戻しましょう。中高年が気楽に登山にチャレンジできるようになって来た背景に、登山グッズの進歩があげられます。特に衛星を利用した携帯用GPS端末(携帯電話ではありません)は、自分の位置を確認できるため、登山家にとっては必須アイテムとなっています。
この位置情報を登録する時に使うのが緯度経度ですが、この基準には「日本測地系」と「世界測地系」があります。今までは日本測地系が多く使われてきましたが、測量法が改正され、経緯度の基準は世界標準「世界測地系」に変わりました。
この影響は大きく、GPSや地図の使用法を誤ると、道迷い遭難の原因となる危険性があります。日本測地系で表してきた地点と世界測地系では、東京付近の緯度で約プラス12秒、経度でマイナス12秒の差になり、これを距離に直すと450mに達します。狭い山道では450mの差は命取りとなります。
GPSでは測地系を初期設定する場合に、世界測地系か日本測地系を選ぶ必要があります「世界測地系」はWGS?84、「日本測地系」は「トウキョウ」と表示されています。
また国土地理院発行の地形図には、平成12年度版より右下隅に「茶色の経緯度数値は世界測地系による」と書かれて、地図枠には世界測地系日本測地系との2形式併記型で表示されています。携帯GPSを利用する場合、1分おきに緯度経度線を描くことがありますが、かなり注意しないと測地系を見誤る場合があります。
地図会社発行の登山地図でも、世界測地系に変更しているものと、日本測地系のまま表示されているものもあります。地形図が完全に世界測地系となるのは3年後といわれています。利用する地図に応じてGPSの測地系を変更および確認する習慣をつけておく必要がありそうです。