外国の映画をやDVDには日本語吹き替え版と字幕スーパー版があります。海外で買ったDVDには字幕スーパーも無く、もちろん吹き替えではありませんから日本に持ち帰ってそれを見たときに慌てることがあります。
映画のオリジナル性からすれば、声優にイメージが左右されやすい吹き替え版より、俳優の地声が伝わる字幕スーパー版のほうがよいとされますが、子供向けのアニメなどは日本語吹き替え版が適切でしょう。
字幕スーパーの「スーパー」とはどういう意味なのか疑問になることがありますね。
スーパーとはスーパーインポーズのことで、フィルムを字幕やマーク、タイトルなどを重ねて映像を合成することをいいます。
海外の映画であればそのセリフに合わせてフィルムに日本語を重ねて作った映画が日本語字幕スーパー版ということになります。英語で「字幕」のことは、「subtitles」(サブタイトルズ)といい「字幕付きの映画」は「subtitled film」(サブタイトルドフィルム)というようです。
字幕スーパーの日本語は何んとなくレトロな雰囲気があります。これは、字幕を入れるときの作業工程の都合であのような独特の書体になっているのです。
字幕は印字用の凸版を作り、それをフィルムに重ねて刻印するように印字します。フィルムは大変デリケートなため、印字された際の凸版がくっつきやすい。そのため、凸版が剥がれやすいように、書体は空気が流れやすいように工夫されているのです。
たとえば口という字は、中の部分に空気が閉じ込められ、それが吸盤のようになって凸版が剥がれにくくなります。それを避けるため、文字の線のどこかを途切れるようにして空気の流れを作っています。
そして書体ですが、映画書体といわれるものです。いまや手作業の職人は少なくなってしまったそうですが、早い映像の動きにもついてこられるよう、簡潔にしかも認識しやすい書体となっています。文字数にも制限があり、単なる翻訳ではないところが、人の手が入っている良さでもありましょう。
最近はデジタル化されたとはいえ、字幕スーパーは大変手のかかる仕事。ゆえに、字幕スーパー版と吹き替え版はまったくコストが違うとのこと。もちろん字幕スーパー版のほうがコストがかかります。そのため、映画会社は興行の際に、利益が上がると推測されるものだけ字幕スーパー版を作ります。ということは字幕スーパー版はある程度の人気を見越している映画なので、ハズレが少ないかもしれません。
なお、最近のテレビでは、画面の下にタレントがしゃべっていることをそのまま文字で表示することが多くなりました。これも一種字幕スーパーですが、業界ではテロップ(テレビジョン・オペーク・プロジェクター)と呼んで区別しているようです。
しかし、日本語の番組なのに日本語のテロップを流さないと、日本語がわからない日本人になってしまったのでしょうか?なんとも不思議な現象です。
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