役所の職員のパソコンから個人情報が流出する事故が相次ぎ、問題になったことがあります。最近ではそのような事件はあまり聞かなくなりましたが、流出に貢献しているファイル交換ソフトWinnyは今なお絶大な支持を得ているのが現実です。
実際の流出事故は、役所の業務用のパソコンであったり、職員個人のノートパソコンであったり、自宅のパソコンであったりしました。役所のパソコンにWinnyがインストールされているというのも驚きです。仕事をしているフリをして個人で楽しんでいたのでしょうか?
世間ではあたかもWinnyが悪いように喧伝されていますが、Winnyが個人情報を流出するわけではありません。Winnyがインストールされているパソコンがウイルスに感染すると、そのウイルスがWinnyを使ってバックドア操作を行い、個人情報を流出させてしまうのです。
つまりウイルス防除ソフトでセキュリティを確保していないズサンさが事件の原因となっているのです。そしてこのパソコンユーザーは自分のズサンさには気が付いていないのが普通です。
Winnyというファイル交換ソフトの作者は著作権侵害幇助の罪で有罪判決になってしまいましたが(金子氏は控訴)、この技術自体は責められるものではありません。むしろ技術としては優秀であり、これからのネットワークを背負って立つかもしれない可能性を秘めています。要は使い方次第ということです。
Winnyの仕組みはPeer to Peer(ピアトゥピア)という技術を使っています。Winnyはファイル交換ソフトですが、その交換元を参加ユーザー(これをノードといいます)それぞれに割り振っています。つまり、今までのサーバー(情報を集積するところ)+クライアント(その情報を使う人)という概念ではなく、参加ユーザーのパソコンがすなわちサーバーであり、同時にクライアントであるという考え方です。
通常ネットワークを構築するときには、アクセス数がどれくらいあるか利用頻度を検証しながらサーバーのキャパシティを考えます。アクセス数が多くなればサーバーを増設したり、回線を太くしたりします。しかしこれらは同時にお金がかかる仕事でもあります。特に動画やストリーム配信などファイルが大きい場合はそれなりの投資が必要になってきます。
この点ピアトゥピアの概念を使えば、アクセスの増加は全く怖くありません。参加者=サーバーの数ですから、たとえば1000人参加すればその時点で一挙に1000個のサーバーを持つのと同じ効果があり、劇的にファイル交換がスムーズになります。
ファイル交換ソフトのユーザーは6万人とも100万人ともいわれています。既にに音楽配信会社や動画配信会社はこのピアTOピアの技術を導入し始めており、今後増えるであろう長時間映画の配信も当然、この技術を使うことは自明の理です。参加者をサーバー化できるピアトゥピア技術はネットワークを大きく変えることは間違いありません。ただし同時にセキュリティ技術も必要になってくるでしょう。
読者の皆さんもWinnyを使うなとはいいませんが、それなりのウイルス対策、セキュリティ知識も仕入れて安全に使うようにしてください。
【関連する新聞記事】
◇Winnyの開発者,金子勇被告に有罪判決(2006年12月13日ITpro)
京都地方裁判所は12月13日,ファイル交換ソフト「Winny」を開発し公開したことが著作権法違反ほう助に当たるとして起訴されていた金子勇被告に対し,有罪判決を言い渡した。150万円の罰金判決となった。
◇ウィニーで被害者情報など流出 山梨県警(2007年02月24日asahi.com)
山梨県警の捜査員の私有パソコンから、事件の証拠物件を提出した人の名前や住所など、少なくとも500件以上の個人情報が入った捜査資料がインターネット上に流出していたことが、わかった。捜査員はファイル交換ソフト「Winny(ウィニー)」を使用していたとみられ、県警は、パソコンがウイルスに感染し、ウィニーを介してネット上に情報が流れたとみて調べている。
◇2011年12月19日最高裁で無罪判決
2011年12月19日、最高裁判所第三小法廷(岡部喜代子裁判長)は、ファイル共有ソフト「Winny」を開発・公開していたことで著作権法違反幇助の容疑で起訴されていた金子勇氏に対して、検察上告を棄却。これにより金子氏の無罪が確定した。
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