「試金石」は「しきんせき」と読みます。試金石とは、金が本物か贋物かを調べるときに使う黒い石を言います。金をこの石にこすりつけその条痕を見て調べます。
よく「今後のビジネスモデルの試金石といえよう」などという言い回しをすることがあります。意味は、このビジネスモデルが本物ならばのこれに続くモデルも伸びるだろうし、贋物ならば似たようなモデルはすべてダメだろう、などという時に使い、転じて人物や物事の真価を問うことになるような試練をさしていいます。
本物の金の場合は、試金石にこすり付けると条痕は金色になります。黄銅鉱や黄鉄鉱などの鉄や銅を含む鉱石も見た目は金色をしていますが条痕は金色になりません。それゆえ金を含む石は賢者の石、黄銅鉱などは愚者の石と言われることもあります。
試金石には日本ではおおむね那智黒石(なちくろいし)が使われます。那智黒石は三重県熊野市にある熊野層群大沼層というところで採れる石で、約1,500万年前に堆積した泥が固まったもので黒色頁岩と呼ばれている石です。
泥岩の割には非常に細かく緻密で硬く、層理方向が揃っているため、身近なところでは墨を摺る硯(すずり)にも使われています。那智黒石はほかにも碁石の黒石、文鎮などに使われています。濡れると艶のある漆黒になるので、打ち水をすると美しさが増す日本庭園の敷石、たたきなどにも使われています。
那智黒石は近年採取が制限され、これに代わる石材が中国・フィリピンなどから輸入されていますが、漆黒の美しさはやはり那智黒石に敵いません。
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