キツネに化かされて、風呂だと思って入ったら肥溜めだった、なんて民話があったりしますが、きつね様に化かされるというのはまんざらウソでもなく、そういう体験をしたという人も実際いるようです。
昔は畑の脇や農家の便所脇にはよく肥溜めがあり、そこに落ちる子供も居たようです。じつは私もその一人。子供のころでしたが、深さより背丈があって良かったと思います。背丈より深かったら死にますよマジで。抜け出せないですもん。
さて、化学肥料が発明される前は人糞は貴重な肥料でした。江戸時代以前では人糞が下肥として販売され、その利権争いまであったされます。まさか糞尿まで年貢をかけたということは無いと思いますが、利権があったならここでも悪代官がはびこったのでしょうか。
お百姓さんに言わせると、肥えは人糞に限るそうです。それも尿があまり混ざってないものが最良だとか。私が落ちた肥溜めももちろん人糞を溜めたもの。服を洗濯しても繊維に絡まったちり紙が落ちなくて、結局その服は捨てたように記憶しています。
肥溜めというのは、人糞を溜めているから匂うかというとそんなことはありません。表面はホットミルクに張るような膜が出来ており、その中で嫌気性のバクテリアが活躍するのかあまりにおわないんですね。しかも、その表面は土色していて全く地面と区別がつかない。普段からの遊び場なのにうかつにも落ちてしまうのは、遊びに熱中していると全く区別がつかないからです。唯一の判断材料が、雨よけに藁や茅で簡単な屋根がついていること。これを見逃しちゃーいけません。肥えは雨で薄まってはいけないのです。