酸化物超伝導体YBCOを液体窒素(-196℃)で冷却した上にある永久磁石。1cmくらい浮いているのがわかる。緑色の部分を持ち色々動かしてみると、磁石の反発力とは違って、その場に保とうとする力がある。例えばこの状態で上に引っ張ると下に戻る力が働き、下に押し付けようとすると上に戻ろうとする。これを超伝導体のピン止め効果と言う。
超伝導の発見は、液体ヘリウムの発明によるところが大きい。液体ヘリウムはマイナス269℃ですが、この液体ヘリウムを寒剤として水銀を冷やしたところ、ある温度において電気抵抗が突然ゼロとなる超電導現象が発見されたのです。1911年のことです。
その後多くの金属や合金にもこの現象がみられ、超伝導は一般的な性質であることがわかりました。このような現象を超伝導と呼び、超伝導となる物質を超伝導体と呼びます。物質を冷やしていったときの超伝導となる温度を転移点といいますが、これは物質によってまちまちですが、大体が数K(ケルビン:華氏ではない)の程度となっています。これに対し1986年以後発見された銅酸化物の超伝導体の転移点はかなり高く100K以上のものもありました。このような転移点の高い超伝導体を高温超伝導体と呼んでいます。高温といってもマイナス170℃ではあるのですが。
超伝導の大きな特徴とあげられるのが電気抵抗がゼロになるということです。抵抗がゼロであるということは超伝導体で輪を作り、そこに電気を流すと電流は減衰することなくいつまでも同じ力で流れつづけることになります。電気を閉じ込めればその中でずーっと回り続けるということです。電磁石なのに永久磁石が作れるということです。実験によれば1年くらい回り続けても減衰しなかったという結果があります。
また電気抵抗がないということは、そこに大電流を流しても発熱することなく流れるということ、つまりエネルギーロスがないということです。電気抵抗があった場合大電流を流したら大変な熱が発生します。それがないということは大電流を流しても安全かつ管理も楽で、大きな力を持った磁石ができるということになります。リニアモーターカーなど大きな物体を浮上させるには相当なエネルギーが必要ですが、ロスの無い超伝導は最適というわけです。
欠点もあります。超伝導は超伝導が起こる温度では電気抵抗も無く安定して動作しますが、その温度管理システムが壊れたとき、つまり温度が高くなってしまったときは電気抵抗が生じ、それに伴い大電流による大発熱が起こります。これは相当危険なことです。こういった事故を予防する技術も平行して研究を進める必要がある。それが超伝導です。
反発浮上方式とピン止め浮上方式