現在使われているコンピュータは計算する素子の中に電子が入った状態を「1」入っていない状態を「0」として計算します。したがって単純な「1たす1」計算を電気の速さに頼って計算しているわけです。水をバケツで汲み出すことにたとえれば、どんな速さであってもバケツは一つしかないのでその能力には限界があります。
ところで、このバケツが2個3個あるいはもっとたくさんあったらどうでしょう?バケツを扱う人がいればバケツの数だけ同時に水を汲み出すことができますからもっと楽に効率的に仕事を進めることができます。そういった考え方で設計されたコンピュータが量子コンピュータです。
20世紀になって発達した量子力学の世界では、今までの古典的な物理学では考えられないいろいろなことが起こり得ます。その量子力学で組み立てられたコンピュータはいろいろな計算を同時に行うことができることが理論上発見されました。
その原理はなかなか難しいのですが、今までのコンピュータの説明の場合、その素子の中の電子の存在というのは「点」で表しがちですが、実際には雲のような状態であるとされます。雲のような状態ですから、あっちにも存在しこっちにも存在するということがありえるのです。そして両方に計算情報を持たせるとすれば、同時に結果も両方持つことができる、つまり同時に違う計算ができるという理論が成り立つのです。
ちなみにどれくらい速いかというと、量子ビットをN個使った場合、1回の入力は既存のパソコンで2のN乗回の入力に匹敵するといいます。つまり量子コンピュータでの100回の入力は、既存パソコンの2の100乗回に匹敵するというわけです。ところで2の100乗って??
今までのコンピュータとは全く異なった原理で作動する量子コンピュータは次世代のコンピュータといわれていますが、実験では成功しているものの実用化されるのは数十年先ではないかとされています。
夢のようなコンピュータは遺伝子やたんぱく質の解明、あるいは天文学に夢のような計算結果をもたらすことが考えられますが、同時に暗号なども瞬時に解析してしまい、その使い方によっては善にも悪にもなる代物です。結局はどういう人間がそういう使い方をするかにかかってくるわけですが、ぜひとも有効に活用してもらいたいものです。もっともそのころには私は生きていないと思うので恩恵にはあずかれないのですけどね。