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[660]窃盗と横領

窃盗(刑法235条)というのは人の目を盗んで物をいただいてしまう(窃取)ことをいいます。万引きなどは典型的な窃盗です。これに対し、横領(刑法252条)は何食わぬ顔で他人の物を自分の物にしてしまうことをいいます。経理職員が仕入先に支払う現金を運ぶ途中、ちょっと寄り道をしてそのお金で宝くじを買ってしまう、なんてのは横領になります。似ていて非なるもの、それが窃盗と横領です。

窃盗は物、横領はお金というようにも思われがちですがそうとも限りません。スーパーでスキを狙ってレジのお金を失敬すれば窃盗ですし、雨が降ってきたので電車の中にあった置き忘れ傘をちょっくら拝借すれば占有離脱物横領となります。

最近流行りのピッキングによる空き巣ねらいも窃盗です。これは侵入盗といわれます。侵入盗には空き巣狙いのほか、忍び込み、事務所荒し、出店荒し等があります。万引きや自動販売機荒し、車上狙いは非侵入盗といいます。その他、クルマを盗んでそのまま乗っていってしまう乗物盗などもあります。

自転車なども自転車売場や駐輪場から失敬するのは窃盗に当たり、持ち主が不明な放置自転車を失敬するのは占有離脱物横領になります。

ちなみに窃盗した者を窃盗犯といいますが、横領の場合は知能犯とされます。窃盗は欲望の赴くまま衝動的に犯してしまう罪なのに対し、横領はそこに計画性があるとされます。ということは罪状も横領のほうが重いのかと思われがちですが、そうでもなく窃盗は懲役10年以下となっていて横領の懲役5年以下より罪は重いです。(業務上横領は懲役10年以下)

ただし、横領でも先ほどの自転車の占有離脱物横領は別格でこの罪は一般の横領より軽くなっているようです。(占有離脱物横領は懲役1年以下又は罰金10万円以下)

さて、親子や夫婦間での盗難はどうなるのかというと、配偶者、直系血族又は同居の親族との間では窃盗、横領は成り立たないことになっています。つまり奥さんの財布からパチンコ代1万円を失敬しても罪にはならないということです。しかし、その後の修羅場については当方は関知いたしませんのでご注意を。

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