ろうそくといえばキャンドルとしてクリスマスやバースデーあるいはアロマキャンドルなどが使われますが、これは西洋ろうそくといわれるものです。日本には古来より伝統の工芸品として伝わる「和ろうそく」というものがあります。今では仏事以外にはあまり見なくなりましたが。
和ろうそくに使われる蝋(ろう)は櫨(はぜ)の実から絞ったものが最高とされます。この品質の高さは「ジャパンワックス」の名称で世界中に賞賛されています。しかし、櫨を使ったろうそくはその日本でもあまり作られなくなってきました。理由は色々ありますが、パラフィンという石油から取れる格安な材料があるということと、櫨自体が取れにくくなったことが原因のようです。櫨はウルシ科の植物ですから当然かぶれます。また実は高いところにあるので採取に苦労します。そんなことも櫨の生産が少なくなってきた理由でしょうか。
櫨蝋で作られたろうそくは炎がきれい、すすが出にくい、等の特徴があります。また融点が低いので手作業で作るろうそく造りに適しているということも大事です。今普通に使われているろうそくはパラフィンですがこのパラフィンは融点が高いので溶けた蝋でやけどをします。ところが櫨で作られた和ろうそくは溶けた蝋の温度が低いのでやけどをしません。
雑誌などでSMプレイにろうそくを使う場面を見たことがありますが、さぞ熱いだろうと思いきや、和ろうそくを使えばやけどの心配はないわけです。しかし熱いことにはかわりないと思うのですが。
和ろうそくは白い色をしていますが、櫨蝋はじつは白くありません。和ろうそくは芯に真綿と和紙を使い、その廻りに蝋をつけていきますが、最終的に手で蝋付けを行ないます。そのときに手でこすって空気を混ぜ込みそのせいで白くなるのです。まさに職人の技です。
また和ろうそくには年輪模様があります。芯に何度も何度も蝋をつけていくので年輪のような模様ができるのですが、この年輪は火をつけたときに外側と内側に境を作り、蝋が溶け出さない役目をします。櫨蝋で作られたろうそくは蝋が外に溶け出さないのも特長です。
ところで、タバコを吸うと煙が出ますよね。数人で同時に吸うと部屋中ケムだらけ。そんな時、ろうそくを一本灯してみてください。あら不思議。煙が消えます。煙というのは不完全燃焼で生じます。ですから、これを完全に燃焼してやればよい。ろうそくの炎の周りは熱で対流していますので、煙は自然と炎に吸い込まれ、完全に燃焼して煙が消えるというわけです。