猫の遺伝子はいろいろ調べられていて、結構面白い話があります。例えば、尻尾の無い種類のマンクスという猫は致死遺伝子を持っているので、尾の無い親同士を三代交配させてはいけません。致死遺伝子が働き子猫が生まれないのです。そのために、マンクスの繁殖には、尾のあるマンクスを親として使う必要があるのです。尾の無いマンクスを作るのに尾のあるマンクスを使う、この矛盾。
また、スコティッシュフォールドという耳が折り畳むようになった猫がいます。この猫も耳が折り畳むという遺伝子に奇形が発生しやすいという情報を併せ持っているため、奇形が出ないよう交配の為に耳が折畳まっていないスコティッシュフォールドを親に使う必要があったりします。尾のあるマンクスや、耳が立っているスコティッシュフォールドも血統書が付きますが、外見上の特徴が見えないため、オーナーはなんとも複雑な気持ちとなることでしょう。
また、白い猫は目がブルーになることが多いのですが、毛色に全く他の色が無い場合つまり純白の毛色の猫が青い目を持つと、これが耳が聞こえない猫となります。これは胎児の時に、目の中のメラニン細胞の移動がうまくいかなかったことに起因します。目の色が青色というのは、まったくメラニン細胞が定着していないため、光彩部分の反射によって青く見えているだけで、実際は無色なのです。
メラニン色素の移動と音を聞く細胞色素は同時に移動するため、移動が行なわれない青い目の猫は同時に音を聞く細胞の移動も行なわれないため、したがって青い目の猫は耳が聞こえないことが多くなります。
なお、左右の目の色が違うことをオッドアイといいますが、この場合も青い目のほうの耳が聞こえないことも多くあるようです。もっとも猫はその他の器官が優れているため、耳が聞こえなくても特に不便は感じないようですが、繁殖家はこのあたりよく理解する必要があります。