ライムライトといえば、チャップリンの自叙伝的映画でおなじみですね。しかしライムライトという言葉の意味を知っている人はあまりいないようです。ライムライトのライムはミカンの仲間のライムではなく、石灰のライムであり、その石灰を使った照明器具のことをライムライトというのです。スペルは柑橘類のライムと同じ(Lime)です。
19世紀以前の昔は電気はありませんでした。街路灯はガス灯ですし、当然舞台の照明もランプなどの直火を使ったのです。火を使いますから火事の危険性が大きい。したがって、昔の劇場はことのほか火の取り扱いには細心の注意を払ったものです。しかしそれでも火事を出し、消失してしまうことも多かったです。その舞台で照明として使われたのがライムライトです。別称はカルシウムライト。石灰灯とも呼ばれました。
仕組みは、石灰を棒状、あるいは球形に成形したものに、酸素と水素を別々の管から同時に噴出させて点火し、高温の火炎をその石灰に吹き付けます。すると白熱した石灰は熱放射を起こし、強烈に光を発します。その光をレンズで集光して照明に用いたのです。こうすることで直の炎は得られない白い光を発するのがライムライトの特徴。舞台でのスポットライトに欠かせない存在でした。
ライムライトは19世紀中ごろに発明され、電灯が発明されるまで劇場の舞台照明として盛んに用いられました。1878年にタングステンによる白熱電球が実用化されると次第に廃れていき、20世紀初頭にはついに使用されなくなってしまいました。
照明としては使われなくなった代わりに、晴れやかな舞台を演出したライムライトは「名声」の代名詞として、それ以降用いられるようになりました。そんな当時に思いをはせて、チャーリー・チャップリンの映画作品『ライムライト』をもう一度見てみましょうか。