伝統的な季節感をあらわす6月の花として有名なのがハナショウブ。似たような花にカキツバタ、アヤメがありますが、咲く順番は関東地方ではカキツバタが5月、アヤメは5月中旬から下旬、ハナショウブは5月下旬~6月下旬となっています。
ハナショウブとアヤメとカキツバタは大変似ているのですが、次のような相違点があります。
アヤメ:
水草イメージがありますが、水湿地は意外にも苦手で乾燥地を好みます。葉は約1cmと細長く、葉の表面は滑らかで直立。和名は「文目」。日本では約100種のアヤメが栽培されています。
カキツバタ:
水湿地に生育。葉は三つのうち最も長く、幅も約3cmと広いです。葉の表面は滑らかです。和名は杜若。カキツバタの語源は「書き付け花」からきています。「書き付け」とは「こすりつける」ことで、昔はこの花汁で布をこすり染めたのですね。カキツバタの品種は現在でも約10種と少ないです。よく似ていて物事の優劣をつけがたい状況を古来より「いずれアヤメかカキツバタ」と言います。
ハナショウブ:
水湿地でも乾燥地でも生育します。葉の中心に走る縦筋が太く高くなっているのが特徴。アヤメ、カキツバタはこの部分が隆起しないので区別できます。現在売られているものはノハナショウブを改良された園芸種。ショウブとは別物で名称はハナショウブと呼ぶのが正しく、和名は「花菖蒲」。園芸種として改良が盛んなため、現在約2000種ほどあるようです。全国の「アヤメ園」と呼ばれるところで水湿地で植わっているのはそのほとんどがカキツバタかハナショウブです。
ちなみにアヤメの仲間で一番先に咲く「一初(イチハツ)」というのがあります。これも乾燥に強く根がしっかりしているので、敢えて茅葺の屋根に植えて屋根を締め、家を守るために使ったそうです。
ここで気がつきましたが、パソコンで「アヤメ」を漢字変換すると「菖蒲」がでてきます。IME漢字変換ですが、これは完全に間違いですね。