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[273]渡り鳥

コロッケの物まねは楽しい。特に、森進一の真似は圧巻。でも、今、森進一はああいう歌い方はしていません。もっと普通に歌っています。しかし、1966年の「女のためいき」では確かにああいう歌い方をしていました。同時期にヒットしていた曲が城卓矢の「骨まで愛して」。今聞くと、この城卓矢の歌い方が、森進一に影響を与えたのではないかと思ってしまいますが。

森進一が歌った曲で昭和49年の第16回レコード大賞に選ばれたのが「襟裳岬」。この曲はカップスターで有名な吉田拓郎の作曲。作詞は岡本おさみ。全く演歌らしくないこの歌を、演歌の王道を行っていた森進一が歌ってレコード大賞をやすやす取ってしまうところなど、この三人がタダモノではないことを示しています。

その「襟裳岬」の歌詞のなかに「悲しみを暖炉で燃やしはじめてるらしい」というくだりがあります。悲しみを燃やすとはどういうことなのか?

北海道にはシベリアを往復する渡り鳥がたくさんいます。越冬する為に北海道にやってきて春になるとシベリアに帰っていきます。渡り鳥はどうやって海を渡るのかその実体は明らかになっていませんが、オホーツクを渡る鳥は、羽を休める時のために小枝を持って飛んでいくそうです。疲れたら、その小枝を海に浮かべ、それに泊って休む。

襟裳岬の海岸ににその小枝が流れ着くということは、その渡り鳥はうまく渡れなかった証しです。つまり「悲しみ」。漁師はその小枝を集めて暖炉で燃やし、渡り鳥の冥福を祈ったのです。

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