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[1185]酵母と酵素

お酒を造るときに活躍するのが麹菌。麹菌は酵母ともいわれ、発酵食品の醸造には欠かせない微生物です。麹菌・酵母は微生物ですから生きている生命体です。

この麹菌・酵母が作りだすのが酵素です。酵素は麹菌の体内で作られるタンパク質の一種で、デンプンやタンパク質を分解したりくっつけたりする役割を担っています。発酵の「素」だから「酵素」。それを生み出す母は「酵母」。お酒やミソしょうゆ等などの「醸造」はこの酵素の働きになります。酵素はアミノ酸が主体の物質で、生命体ではありません。

ちなみに麹とは材料に麹菌を生やした状態のものをいいます。麹はカビが生えているような状態ですが、これが醸造には必要なのです。麹は適切な温度や湿度で酵素を分泌し、これが醸造(発酵)を進めます。

日本酒を造るときには、酒米に麹菌・酵母をくっつけ、これが生み出す酵素が米のデンプンを糖に分解し、糖はアルコールの元となります。デンプンを分解する酵素はアミラーゼと呼ばれます。

酵素にはタンパク質を分解するものもあります。米に含まれるタンパク質を分解する酵素はプロテアーゼ呼ばれます。プロテアーゼはタンパク質をアミノ酸にまで分解します。アミノ酸はご存知の味の素に代表されるうまみ成分となります。つまりタンパク質を分解する酵素が日本酒の味を決めるということなのです。

このように麹菌・酵母は味の決め手となる大切な役割を担っているのですが、ここに雑菌が混じると余計なアミノ酸ができてしまいます。お酒の場合は、これが雑味となるため品質が落ちてしまうことにもなるため、酒蔵では雑菌が混じらないよう特に気をつけているのです。

地球温暖化のせいで日本酒作りが難しくなってきたと聞きます。麹菌が思うように働いてくれない。そりゃそうです。麹菌は今までの環境でよく働いてきたので、新しい温暖化環境にはなかなかなじめないでしょう。

しかし前向きに考えれば、温暖化環境でよく働く麹菌が新たに生まれてくるかもしれません。そうすると新しい麹菌による新しい味の日本酒が生まれてくるかもしれません。そう考えるとなんとなく希望がわいてきます。どんな環境になっても、力強く生き抜く可能性が、生命の遺伝子には含まれているのですから。侮るべからず。

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