労働者が定年に達すると自動的に雇用関係が終了する制度が定年制です。会社が定年制を導入するには、定年に関しての事項を就業規則に明記し、かつその定年制が慣行的に実施されていなければなりません。就業規則に定年規定があり、従来からの慣行として行なわれている場合には、定年をもって雇用関係が自動終了します。この場合は「定年退職」となります。
ところが、昨今定年が過ぎても継続して雇用されている場合が多く見られるようになって来ました。定年後も引き続き雇用が継続されることが慣行的に行なわれている職場では、労働者が定年後も引き続き雇用されるという期待感を持ってしまうため、そのような場合は定年時に使用者側で「定年解雇」の手続きをします。使用者側で定年解雇の手続きを取らずにいると、そのまま継続して雇用されようとする労働者に対して不当解雇される場合もありますので注意が必要です。
さて、定年といいますと現在は60歳が普通でしょう。定年に関しては「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」という法律があり、これによって現在では60歳以下の定年は違法になります(第8条)。またこの法律は平成12年10月1日以降の改正で定年を65歳とするよう努力義務を課しています(第9条)。
これは昨今の高齢化社会を考慮し背景に、60歳以上になっても同じように働きたいという労働者が多いこと、また年金の財源確保が難しくなっており、年金の給付開始を65歳以上からにしたいことなど、政治的な思惑もあるようです。いずれにしても企業としては60歳定年に達した社員を65歳まで継続的に雇用するよう、積極的に努力していくことが求められていくでしょう。
定年退職者の再雇用については就業規則に規定することが必要です。定年後の再雇用はそれまでの高賃金を一旦精算する意味もあることから、どのような基準で再雇用されるかが重要な問題となるからです。
一般的には、定年後再雇用される場合は嘱託(しょくたく)社員とする場合が多いです。仕事の内容はほとんど変わらないことが多く、たとえ退職金を受け取っていても、勤続年数等は通算されるのが普通です。従って、年次有給休暇などの算定も新規と異なり、一定期間置いた後の再雇用以外は、勤続年数を通算した上で休暇日数を算定することが必要です。