管理監督者は労働基準法第41条第2号で言及されているもので、労働者を管理監督する立場の人をいいます。自身の労働時間の管理は自主的に行うことができ、仮にタイムカードなどで管理されていたとしても給与計算上で便宜上行われていることが多いなど、自身の裁量で就業できるのが特徴です。
レストランチェーンの店長は、自身で労働者の募集もでき、かつそれらの給与額や労働時間の管理把握、そして労働時間のコントロールもできます。労働者を管理監督する立場であることから管理監督者のように見えます。店長は社内的にも管理職として位置づけられています。
しかし、これを管理監督者と認めない判例があります。
《レストランビュッフェ事件・大阪地判昭61.7.30・労判197.65》
「ファミリーレストランの店長について、コック等の従業員6?7名を統制し、ウエイターの採用にも一部関与し、材料の仕入れ、売上金の管理等をまかせられ、店長手当月額2?3万円を受けていたとしても、営業時間である午前11時から午後10時までは完全に拘束されて出退勤の自由はなく、仕事の内容はコック、ウエイター、レジ係、掃除等の全般に及んでおり、ウエイターの労働条件も最終的には会社で決定しているので、管理監督者にあたらない」
これは、肩書きや社内的ポストにかかわらず「実際がどうであるか」を元に判断された判例です。ポイントとしては仕事内容と拘束時間が最も重要なものとしてあげられるでしょう。自身がコック同様、ウェイター同様、そして人がいないときにはすべてをこなす必要があるのが店長です。急に人が休んだときには連続して勤務する場合もあります。そこに自由な裁量は入り込む隙はありません。ファミレスの店長は管理監督者ではないと判断され、会社には残業代支払いを命じられました。
ただし、実際のファミレスの店長はどうだといえば、管理職または管理監督者として従事していることも多いのです。なのになぜ文句を言わないのかというと、それらを残業としてカバーする以上の給料をもらっているからです。
労働者が訴訟を起こすのは、働いた分だけもらっていないと感じるから。役職など関係ありません。労使ともに円満の秘訣は「仕事に見合った分給料を払っているか?」、「給料に見合った分働いているか?」に尽きるのです。