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[256]派遣社員という制度

 

秋葉原の無差別殺傷事件の容疑者は派遣社員だったといいます。そして職場の不満が原因のひとつとなって犯行に至った経緯が明らかにされつつあります。そもそも日本の派遣社員制度自体に軋みがあるように思えるのです。
 
派遣社員の本来の意味は、企業において『特に力を入れたいプロジェクトがあったとき、それを遂行するためには社内に人材がいないので、スキルのあるスペシャリストに臨時で社内に入ってもらいそのプロジェクトを達成する』その意味において派遣社員の価値が存在します。
 
したがって、そのスペシャリストは自立できるほどのスキルを持っているわけで、派遣先の社員より報酬が高いのが当たり前です。そしてプロジェクトが終わった際には契約終了。できる派遣社員は次の契約先へと向かいます。こういった派遣社員を正社員に迎えることはありません。なぜなら正社員で働くより派遣社員で働いていたほうが報酬が高いから。特に正社員として迎え入れる場合は役員クラスなどのポストが当たり前。それ以下はありえません。
 
しかし日本の派遣社員はどうでしょうか?
 
日本の派遣制度はパート・アルバイトよりは報酬は上、しかし正社員よりも報酬は下回るのが現実。これでは企業は正社員より安い報酬で使える派遣社員を使い捨て感覚で雇用しようとすることになります。だから、一定期間の後、派遣社員を正社員に迎えるように当局が指導する、という変な構造が生まれてしまうのです。これでは、派遣社員は単なる補充要員でしかありません。
 
そもそも派遣社員は正社員より報酬が高いのが正常です。それには派遣社員自体の質の問題もあります。正社員になれない人が派遣登録する、という現実もあり、ここに雇用問題の根の深さがあります。中間搾取を糾弾される派遣会社にも問題が山積みでしょう。というより、こういった低時給の派遣会社のビジネスモデルって将来は無いのではないでしょうか。
 
「派遣社員を雇用する場合は時給1万円を下回ってはならない」
 
たとえばこういった法律を作れば、正常化すると思いますが、果たしてこれだけのスキルのある人が日本に存在するかどうかも疑問です。派遣社員として需給がなければビジネスモデルとして難しい。もともと派遣制度はアメリカのもの。個人の能力が高く評価されるアメリカならばありえるでしょうが、組織を重んじる日本では派遣制度はビジネスモデルとしては難しいのではないでしょうか。
 
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