【退職金の減額】
社員が退職する場合、退職の理由によっては減額したい場合があります。たとえば退職した社員が競合他社に転職するような場合です。
この場合、退職金規程で減額する定めがとくに無い場合は、理由はどうあれ退職金を減額することはできません。退職金はあらかじめ決められた賃金であるとされ、ここに賃金全額払いの原則が適用されるからです。
そこで「競合他社へ転職する場合は退職金を減額する」と就業規則(退職金規程)に明記すれば、減額も原則認められることになります。この場合、退職金を減額するということは一種の制裁という意味があり、競合他社に転職することで自社に対して背任行為として明確にされている必要があります。
コンピュータ関連では転職によるキャリアアップが盛んになってきましたが、同じコンピュータ関連会社に転職することがわかったとしてもこれだけでは競合他社であるとは言い切れません。同じコンピュータ関連であり、同じような製品を開発しており、その社員が競合他社に転職することで自社に少なからぬ影響がでる可能性がある、など具体的である場合にのみ退職金の減額が認められます。
しかしこういう場合、退職金を減額するほどの重要な社員をみすみす取られる人事に問題ありと思ってしまうのですが。
なお、退職金制度がなく使用者のさじ加減で恩恵的に支給されている場合は減額できます、というか退職金制度が無いわけですから減額という議論がそもそも生じません。したがってこういう場合は競合他社へ転職する社員に退職金を不支給としても何ら問題とはなりません。