農業国家である日本は、古くから五穀の収穫を祝う風習があります。その年の収穫はそれからの一年を養う大切な蓄えですから、一年中で一番大事な行事なはずです。ちなみに五穀とは米、麦、豆、あわ、きび、またはひえのこと。新嘗とはその年に収穫された新しい穀物のことをいいます。
祭祀としての新嘗祭はもともと天皇が仕切っていました。国家の大事なお祭りですから当然のことです。秋の9月11日に神嘗祭(かんなめさい)、仲冬11月の最初の卯の日に相嘗祭(あいなめさい)、2番目の卯の日に新嘗祭(にいなめさい)を行うことになっていました。
この新嘗祭のうち、天皇が即位して最初に行なうものを特に大嘗祭(おおなめさい)といい、天皇の即位を天下に知らしめる行事として特に大々的に行なわれたといいます。
昔は天皇の神事は伊勢神宮で行なうことに決まっていました。といいうより天皇は神の子であり、その祭りは神宮で行ないます。神宮とはイコール伊勢神宮のことです。もともと神宮は一つであり、その神宮が伊勢にあるから伊勢神宮といわれます。つまり天皇の神事は伊勢神宮で行なうのが当たり前だったわけです。
さて、11月23日は勤労感謝の日ですが、この日の制定は新嘗祭を意識して1948年に制定されました。農業は一年を通して行なわれる労働ですが、その結果を喜ぶ新嘗祭を勤労感謝の日としたことは、意味からして全く合理的です。
現在伊勢神宮では10月15日に神嘗祭、11月23日に新嘗祭を実施しているようです。昔はその年の新米は新嘗祭で神様にお供えし、それが終わってからみなで頂くのが習慣でした。今は新米が穫れるとすぐに食べてしまいます。昔のほうが礼儀正しく、奥ゆかしかったのですね。
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