たまごやです。去る2月21(土)、東京日比谷で小林誠先生のシンポジウムに行ってきました。大いに感化されて帰ってきましたので、その熱が冷めないうちにコラムにまとめました。しばらく常識ぽてちも「物理関係」が続くかも知れません!?
小林先生は言葉少なめにトツトツと話す科学者タイプですが、話が面白かったのは数物連携宇宙研究機構副機構長の相原博昭先生。「話したいけど話せないこと」がたくさんあるようでした。うわさのヒッグス粒子についてまもなく大発表があるとのこと。楽しみです。
先日ノーベル賞を小林・益川理論として小林誠氏、益川敏英氏が受賞しました。受賞理由は、素粒子(クォーク)が自然界に少なくとも三世代以上ある事を予言し、その素粒子がCP対称性の破れを起こし、その結果現在の「物質の宇宙」が存在しえるというのものです。
と、聞くとすごく難しい「あっち」ことのように思えますが、じつはこれはとても身近なことで、かつ重要なことなのです。この理論が証明されたことで「我々と我々の宇宙が存在する」理由が明らかになったのですから。
【宇宙創成のときには同じ量あった《反物質》と《物質》が、なぜか《反物質》が無くなり《物質》だけの宇宙となった】
電子を光速近くまで加速し、その電子同士を衝突させると、この宇宙のビッグバンを模擬的に再現することができます。その衝突でできるのが物質と反物質。これは必ずペアでできます。ところが物質と反物質はできてもすぐに反応して、元の「無」に戻ってしまいます。何もなかったように。
もし、そうであればこの宇宙がビッグバンで登場しても、その直後に物質と反物質が反応して、瞬く間に消滅してしまったはずです。
しかし現実には、物質が残り、この宇宙を形成しました。なぜペアであるはずの反物質が無くなり、物質だけが残ったのか?
それを証明する鍵となる理論が小林・益川理論の「素粒子のCP対称性の破れ」なのです。理論的にはだいぶ前から論じられていましたがそれを証明することができないでいました。しかしそれを証明したのが茨城県つくば市にある高エネルギー研究所のKEKBという機械。
この機械が、宇宙の始まりを再現し、そのときに起こる物質と反物質の動きを検出したところ、同じ挙動を示さないつまり「破れ」が生じることを証明しました。実験結果を受けて、この理論が正しいことが証明されたのです。
この理論のおかげで、我々の「物質宇宙」の存在が証明されたわけですが、宇宙創生時にあった反物質と物質の量はとてつもないものでしたが、ほとんどが消滅しています。素粒子の対称性のわずかな破れによってバランスが崩れ、そのおかげで我々の物質宇宙が存在しえることとなったということは、本当に興味深いことです。
物質でできたわれわれの宇宙がなぜ存在するに至ったか?その解明に一歩近づいたその功績が認められて小林・益川理論はノーベル賞となったわけです。ノーベル賞の選定基準には「世の中に大きく役立つこと」つまり「身近であること」があります。あなたの身近にもノーベル賞の「ネタ」があるかもしれません。