ふぐのおいしい季節です。日本ではふぐは調理するのに免許が要りますが、それ以前に【食べていいふぐ】というのが労働厚生省で決められています。可食ふぐは、ふぐの王様「とらふぐ」をはじめ「クサフグ」、「ショウサイフグ」、棘のない「マフグ」、河豚(ふぐ)の語源ともなった中国河川産の「メフグ」や針の数が375本と決まっているご存知「ハリセンボン」など22種類が可食ふぐとなっています。
この中でも一番人気は「とらふぐ」です。その人気はなんといっても「味がいい・食感がいい」ということ。つまりおいしいんですね。おいしいけれど残念ながら漁獲量が少ないため高価な魚となっています。
とらふぐの本場は山口県下関です。ここでは「ふぐ」といわず「ふく」と濁らないで呼びます。「ふぐ」では「不遇」や「不具」に結びつき縁起が悪いとされるからです。大阪では「鉄砲」とか「テツ」などと呼びます。「てっぽう」とは「たま(弾)にあたる」、「あたれば命がない」という洒落から来ていますが、ふぐちり鍋を「てっちり」と呼ぶ謂れになっています。ちなみにふぐの刺身は「てっさ」といいます。
とらふぐで一番高級なのは「天然物」です。これはその名のとおり荒海で揉まれたとらふぐです。天然物がおいしいとされるのはその「餌」によるようです。ふぐは雑食性ですが、貝類・海老・カニ・シャコなど甲殻類が好きなようです。下関のとらふぐが特においしいのはこのあたりのとらふぐが食べる餌の種類にも依存しているのでしょう。ちなみに天然物はキロ単価1.5万円~4万円というのが相場です。
とらふぐには放流物という種類もあります。放流物とは孵化した稚魚を海に放流してその回遊経路を調べることを目的としたふぐで、放流物である印が付いています。捕獲したときにその印を確認し、回遊経路を確認します。放流物は天然物より3割ほど安い値段が付くようです。味は天然物とほとんど変わりません。
とらふぐを安く提供する店は養殖物を使っています。養殖とらふぐは安く提供されますが、おいしさは餌に依存する魚なので、養殖環境によって美味しいマズイが変わってしまうのです。とらふぐの養殖は熊本県で盛んですが、下関で扱われている安いとらふぐは熊本県産が多いようです。中国から輸入されているとらふぐは餌が悪いため美味しくないそうで、下関でも扱っておりません。養殖物の相場は活魚でキロ単価4千円~6千円程度です。
とらふぐで一番美味しいのは天然物の2~3kgの大きさのオスです。白子入りは一番高く、そして美味しいのです。これを食べるには予算は3~4万円は必要です。