今年も小泉首相は靖国神社を参拝する、と宣言しました。ただし時期については考慮する、とのことです。さらに、靖国神社を参拝することについて中国や韓国からクレームが付いていることを、小泉首相はこれを内政干渉として強い不快感を表しています。
確かに過去国家のため働いて殉職した戦没者を祀るのは国家の仕事でしょうし、国家として当然の行為であり、首相であっても国民でありますから、参拝をすること自体は他国・他民族から非難される筋合いのものではありません。小泉首相が言うようにこれはどこの国でもやっていることです。
もちろん中国も韓国もそれは了承しているのです。しかも戦争は終わっているのであり過去を捨てて国民同士はお互いに協力し合っていこうという気運は高まっているのです。しかし靖国神社にはA級戦犯も合祀されており、その犯人を首相が参拝するということに、中国も韓国も理解ができないのです。
例えば、ドイツの首相が極悪独裁者ヒトラーを祀ったとします。同じドイツ人だからといわれてしまえばそれまでですが、感情としてはおかしなものでしょう。日本人でさえ違和感があるのですから、ドイツ国民は黙っていないでしょう。それと同じようなことしているのが小泉首相の靖国神社参拝なのです。
しかしこの時期に国際協調を強く唱える小泉首相が、なんで中国や韓国を逆なでするような靖国参拝を敢えてするのでしょうか?それにはわけがあるのです。
靖国神社というのは、神社の中でも特殊な神社です。創設は明治天皇ですから神社としての歴史は浅いです。しかもその創設の目的は「全ての戦死者を祀る」というものです。そうする事によって「国家のために戦死した者を国家が祀る、そして国民もそれを倣って戦没者を祀りなさい」という趣旨の神社なのです。したがって靖国神社はただの神社ではなく国家権力そのものといえる神社なのです。
小泉首相は膨大な戦没者を背景にしたその遺族の力を政治に利用したいのではないでしょうか。海外でも防衛的な戦争をできるようにしたいというのが小泉さんの考えですから、参拝するのは靖国神社でなければならないし、靖国神社以外にはないのです。
「戦没者を慰霊するために靖国参拝をするのだ、なにがいけない?」と小泉さんは言いますが、小泉さんが靖国参拝をするようになったのは首相になってからです。それ以前は一度も参拝していません。もし戦没者を慰霊する目的ならば、宗教の自由に配慮して、千鳥ヶ淵戦没者墓苑を参拝するのが筋だと思われます。
ちなみに、戦没者は全て否が応でも靖国神社に祀られてしまうので、他の宗教で祀りたくてもそれは許されません。これは国家神道を強制するもので、宗教の自由を認めた憲法に違反している、という訴訟があっても政府および靖国神社は負けたことがないのです。