柿には、渋柿と甘柿があります。食べるのには甘柿が良いに決まっていますが、ではなぜ渋い柿があるのでしょう。
柿の実には種があります。柿は自分の子孫を増やすため、その実を鳥や動物に食べさせ、中の種をばら撒いてもらうために実を甘くします。しかし、実の中の種が成長しないうちに食べられてしまっては元も子もありません。そこで種が成熟するまでは、実を渋くし、種が成熟してくるとその種から分泌されてくる成分で甘くなるという方法を考えたのです。自然はホント凄い!
柿の渋みはタンニンという成分です。タンニンは話題のポリフェノールの一種で緑茶などにも含まれているおなじみのものです。このタンニンですが、渋柿だけではなく甘い柿にも含まれています。なのにどうして、甘いのと渋いのがあるかというとタンニンの種類が違うからなのです。
渋柿のタンニンは「水溶性タンニン」で食べた時に唾液に溶けるこため渋みを感じます。一方熟した甘い柿のタンニンは「不溶性タンニン」に変化しているの唾液に溶けず、食べても渋みを感じることはありません。甘い柿を切った時ゴマのような黒い点があると思いますが、それが不溶性タンニンです。
甘柿と渋柿の違いは種の成熟に関係しています。どの柿も種が成熟すれば甘くなりますが、渋柿はとろけるくらい熟さないと甘くならないため、渋いうちに収穫し、人為的に加工するため「渋柿」と呼ばれることになります。
次郎柿、富有柿などはもともとタンニンが少ない種類なので、熟せば甘いため完全甘柿として知られています。種ができると、種の中から渋の成分を変化させる物質がでて甘くなる柿は不完全甘柿といわれます。西村早生(にしむらわせ)が有名です。渋抜きをしたり、干し柿などに加工しないと甘くならない完全渋柿には、平種柿(平核無)が有名です。
柿の効用とすればこのポリフェノールタンニンに依存することが多いため、甘柿よりも渋柿の方が利用価値は高いとされています。殺菌力のある柿の葉は柿の葉寿司。柿渋を利用した防腐防虫効果に優れる塗料や染料。柿の幹は耐久性のある良い家具の材料になります。