多くの会社では、結婚を理由とした配置転換が慣習的に行なわれています。同じ職場に夫婦がいると業務に差し障りがあるというものです。どのような差し障り?と聞きたくなってしまいます。世の中の流れとしてはこれは旧態依然とした「悪い慣習」と言わざるを得ませんが、事業主がそう思うのであれば甘んじなければならないのが現状です。使用者の意向は尊重されるのです。
しかし結果として女性のみを配置転換させる場合は男女雇用均等法に抵触し、会社の慣習として強制的に配置転換させる場合は権利の濫用にあたる可能性があります。
同じ会社の社員同士の職場結婚の場合は、片方の社員を配置転換させることが行なわれ、その多くは女性に配置転換を迫る場合が多いようです。結婚後は家庭を作らなければなりませんが、配置転換により多くの負担を強いることとなり結果的に女性は退職せざるを得ません。またこのような退職させることを目的として配置転換をする場合も多いようです。
ポイントとなる点は、まず配置転換は本人の意志は必要ない(会社は配置転換を命令できる)とはいえ労働者の生活に大きな変化をもたらすものです。したがって業務上の必要性と労働者の不利益を考慮して行わなければなりません。
また配置転換の理由ですが、結婚は個人の問題であり、結婚が就業能力に影響するとは思えず、会社の慣例としての一律の配置転換は職権の濫用にあたります。
配転については、86年7月14日の東亜ペイント事件の最高裁判所判決で、配置転換の権利乱用になる三つの要件として、業務上の必要性、二つは他に不当な動機、目的がないこと、そして三つ目は労働者に対して通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものでないこととされ、該当すればその配転は無効とされています。
就業の条件として、結婚の有無や予定、家族や家庭の状況等、職務能力に関係のない事項を理由として、労働条件を変更することは職件の濫用および労働条件の不利益変更にあたり労働基準法に抵触することを知らなければなりません。
結婚を理由に配転を迫られたら?
・就業規則に結婚を理由とした配転の記述があるかどうかを確認する
・会社に男性のほうを配転する意志があるかどうかを聞いてみる
・配転先が遠いなど不利益をこうむる場合は昇給や手当を打診してみる
・配転を拒否してみる
解決しない場合は、労働局の「個別労働関係紛争のあっせん」という制度がありますので利用してみるのもいいでしょう。費用は無料です。