■読者からの質問
私はコーチという仕事をしています。仕事は電話会議システムを使うので、電話が使える環境であればどこにいても参加・担当できます。ですが、電話代は自己負担となります。コーチの契約は、必要条件を満たして尚且つ試験に合格し、1年更新で同意書を交わします。会社からは「コーチはボランティアである」とスタッフもコーチ自身も認識させられています。
ですが、私にはおかしなことだらけに思えています。
・ボランティアとは社会貢献に関わることという印象がある
・企業のメインの収益につながる業務の一端を担っている
・通信費補助が支給されるが地方によって電話代に開きがある
・源泉徴収の対象とならない通信費補助が振り込まれる
・毎年条件が会社都合によって変わったり厳しくなったりしている
・辞めた後はコーチとして活動していたことを履歴書に書いてはいけない
労働契約であるならば、組合を立ち上げたり、労働交渉したりもできるんでしょうけれど、そもそもボランティアと言われているので、納得できなければ辞めるしかなく…せめて辞めた後にも経歴として記載できるように交渉したいのと、可能であれば労働として対価を支払ってもらえたらと思います。
労働ではないからと、同僚には教師がいたり、公務員がいたり、副業が禁止されている会社員がいたりするので、もし労働であるなら、公務員法や会社の就業規定に反する人もでてきます。
私が関わっている仕事はボランティアなのか労働契約にあたるのか、請負契約にあたるのか?教えてください。
■たまごやの回答
お便りありがとうございます。例によってアバウトに答えさせていただきます。
行動を起こす時には関係省庁の窓口にてご確認ください。
『請負か?労働か?』
本件は労働か?請負か?の判断と思います。
ボランティアというのは「自発的に行動する」という意味ですから、主体は自分にあり、行動するかどうかの判断は自由です。しかし、行動中に報酬を得るのであれば請負契約と同じと考えてよいと思います。したがって、やはり、請負か、労働かという問題になります。
こういうケースは、講演への講師派遣に似ています。講師はスケジュールどおりの講演を行い、報酬を得ます。
講演を企画する会社は、聴講者から聴講料をとり、講演を成功させることで利益を得ます。
講演企画会社が講演を取りやめたり、講師が講演をキャンセルしたりすると、損害に応じた損害賠償の責務が双方に生じます。
報酬は講演ごとに双方の話し合いで決められ、それに基づく報酬が支払われます。企画会社も穴を開けられないよう、講師には厳しい条件を突きつけることが多いです。縛りが厳しくても、これは請負契約です。
では、労働契約とはどういうものか?
講師であっても、労働となる場合があります。
・労働契約書を締結している(項目が決められています)
・適用される就業規則がある(年間休日、年休、退職金、昇給、罰則についてなど)
・出勤していく勤務地がある(直行・直帰の場合もあります)
・その事業所で勤務時間を管理されている(みなし労働の場合もあります)
・基本給がある
・その上で、講演数に応じた歩合給がある
・時間外手当が出る
・上長がいる
・業務遂行の指示に対し拒否できない(自由度低い)
・業務遂行の指揮命令がある
・報酬について源泉徴収されている(請負であっても個人の場合は源泉徴収されます)
このような形での業務は、講師であっても労働者ということができます。
で、お尋ねの点ですが…
『私が関わっている仕事はボランティアなのか労働契約にあたるのか、請負契約にあたるのか』
請負契約と思います。労働ではないので労働基準監督署は相手にしてくれません。請負契約として、その契約が履行されていないのであれば、民事裁判で争うことができます。
また「肩書きに履歴を書けない」ということも同意書として記述されていてそれに同意したのなら民法上の契約にあたるので、それを破れば訴えられる可能性があります。
しかし、その性質として「個人のスキル」は「個人に帰属」するものですから、同意書があってもそれを無効とする判断もあるかと思います。そのあたりは裁判所の判断になります。
しかしながら、正義をもって会社と戦うのは「時間」と「精神力」を消費します。たとえ勝つ公算があったとしても、勝ったときには自分もボロボロ。時間がもったいないと思います。もし理不尽に思うのであれば、ほかにも同様に思っている人がいるはずで、そしてそういう会社は段々人が寄り付かなくなって、いずれ消滅します。自分が戦わなくても社会が制裁を加えますので、さっさと見切りをつけ、ご自分の道を歩まれることをお奨めします。
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