[11]中心の力を末端へ
身体の中心の力って、何処にあると思いますか?これまで練習してきた大腰筋です。では、どのように使えば中心の力を末端に伝達できるのでしょうか?
まずは、逆に普段使っている力を考えてみましょう。普段扱うものの中で一番重いのが自分自身の身体です。重い自分の身体を正座した状態から立ち上がる状態まで持ち上げてみましょう。最初にどちらかの足を持ち上げて膝を立てます。その膝に自分の全体重をかけて、大腿四頭筋(太股の前側の筋肉群)を目一杯収縮させて身体を持ち上げていきます。膝周辺の筋肉の悲鳴が聞こえてきそうだと思いませんか。
では、中心からの力を末端に伝えて立ってみましょう。仙骨を12時の位置にします。仙骨を一気に6時の位置にして、自分の胸を上方向に向けて投げ出すように動いてみて下さい。別の言い方をすると、下腹を一気に前に突き出して自分の胸を上に放り投げる感覚です。簡単に両膝で立てる位置まで持ち上がりました。そのままの動きの流れで片膝を立てて、上に向かって身体全体を反らすように引っ張り上げます。膝と太股の前に負担がかからないはずです。この時には、中殿筋(お尻の筋肉)と大腿二頭筋(太股の後部)が働きます。
自分の体の重さを上から下へ移動させるときにも、膝に負担をかけています。立った状態から椅子に腰掛けてみます。ゆっくり膝を曲げるようにすると、段々膝に重さがかかるのが分かるでしょう。では、仙骨を12時から6時の位置に、へその位置でくの字に曲げるように一気に動いて下さい。フワッと膝に重さを感じることなく座れましたか?
このように、動きの中心の力はお腹の中に隠されています。立つ、座るは、前後の動かし方でした。では、左右で使うとどうなるのでしょう。ここでは、ゴルフのスウィングを参考にしてみましょう。左右と言うことは、身体の回旋になります。右利きの人でしたら、テイクバックを右に上げます。これを腕、肩の力を付かずに上げてみましょう。
右股関節の軸を縦軸に折り曲げるように動きます。以前両手を後ろについて、両膝を軽く曲げて座り、大腰筋の力だけで膝を内側に倒す動きをしたことがあります。他の人に倒れないように膝を持っていて貰っていても、その相手を倒すくらいの力が出たと思います。この要領です。あの時は上半身を固定して、下肢を動かしました。今度は、下肢を固定していますから、上半身が動くことになります。上半身を捻ることなく身体を右側に向けられます。この時には全体重が右足の内側にかかります。決して外側ではありません。
では、左側股関節を縦軸で折り畳んで下さい。身体は一気に左に回旋します。上半身には全く緊張がありませんから、スムーズにフォロースルーできるはずです。
岸 元(きしはじめ)