[18]身体を治すには(2)

さらに、おさらいと意識の持って行き方を練習します。仙骨の角度や胸骨の上げ下げで、大腰筋が使える練習を何度も話しましたが、要は頭の重さを踵で支えるのではなく、足の拇指球で支えるのが一番楽な姿勢になるのです。
ほとんどの人は踵で支えています。お腹を前に突き出した姿勢になりますが、この姿勢だと手、肩、足にかなりの無理をさせてしまいます。お腹を突き出した姿勢をすると、胸は下に下がります。胸が下がった状態では、腕を上げるときに必ず肩の筋肉を使うので、肘を横に出すようにして上げてしまいます。箸とお茶碗を持つときに、両方の肘を横に張って持ち上げるようになります。マウスを扱うときに、肘を横に出してしまいます。腕の重さは2~3kgあります。肩だけの筋肉でずっとこの重さを支えなければなりません。当然肩の筋肉は疲労し、次には腕を持ち上げるために頭を傾け、頚部の筋肉でも腕を持ち上げるようにします。自分の元々の癖だけでなく、さらに使い方で肩こりを起こしてしまいます。
下肢は常に上からの重さを支えています。お腹を突き出した姿勢になると、重さを支えるために太股の前側、ふくらはぎの筋肉を使うようになります。時には打った憶えもないのに、踵の痛みで来院してくる患者さんもいます。踵重心で、自分の癖の左右のバランスを崩した状態です。長い時間たったままの仕事とか、長時間の歩行でさらにふくらはぎの筋肉は疲労します。歳を取ると足首が太くなる原因です。
身体を治していくには、元々の癖治しと日常の身体の正しい使い方の両方をしていかなくてはなりません。その両方に効果のでる、常に胸骨を上げるという習慣を付けていきましょう。
胸を上げるという言葉で、ほとんどの人がやってしまうことは、両方の肩を後ろに引いて、背中全体を反らしてしまうことです。それでは、一番悪いお腹を前に突き出した姿勢になってしまいます。どういう意識でこの姿勢を作っていけばよいでしょう。
まず、足を前後に開いて下さい。どちらが前でもかまいません。そして、両腕を前から45度くらいの角度に上げて、前の方の足の親指の付け根に体重を移します。後ろの足はつま先で軽く支えているようになります。そこで、胸をそのままの状態にして、腕だけを下に降ろします。さらに、後ろの足を前の足とそろえるように、前に出します。それで、胸が上がった姿勢になります。自分の頭の重さがそのまま自分の足の拇指球の上に乗っているような感覚です。
岸 元(きしはじめ)

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