[34]身体が教えてくれること

ここまで練習を続けてきた人なら、自分の中心軸をはっきり意識できると思います。背中に力を入れていたり、お腹を突き出している姿勢では無理ですよ。

では、長い棒を両手で持ってみて下さい。バイクのハンドルを持つように、です。その中心を誰かに持ってもらいます。胸と腕の角度を全く変えずに、自分の中心軸で回転してみて下さい。ちゃんと相手を動かせましたか?あえて腕の力を使うとすれば、角度を変えないために使います。相手を横に動かす為に使ってはいけません。

今度は、相手に持ってもらったまま上に上げてみて下さい。肘の角度を変えないようにして、あくまで肩関節を中心点として上げてみて下さい。最初にへその下から自分の胸を上げるような意識で動き、胸骨が上に動き始めたら棒を上げて下さい。抵抗を受けずに上がりましたか?

次は、下げてみて下さい。へその下から自分の胸骨をしたに下げるように動き、棒を下げます。どうですか?

これらの動きは、中心からの力を腕に伝えて動かす動きです。布団の上げ下ろし、洗濯物を干すとき、取り込むとき、とにかく両手の作業の時には欠かせない動きになります。

面白いもので、何も意識しないで物を持ち上げようとすると、必ず意識は物との接点に行ってしまいます。つまり、自分の手です。重い自分の手を上に上げるとき、肩を引き上げ、肘をできるだけ曲げて上に上げようとします。横に動かそうとすると、動かしたい方向に自分の身体を動かしてから、その方向に腕を引いて動かそうとします。下に押すときには、肩と肘を上げて、手に自分の体重を乗せようとします。

これらの動きで一番大切なことは、自分の中心軸がまっすぐに立っているかどうかです。手を動かそうとすれば、身体の中心軸を曲げてでも、無理な力を使ってしまいます。何度もお話ししてきましたが、これが身体の故障の元になります。自分の中心軸が自分の中にはっきり感じられるまで、何度も練習してみて下さい。そして、いつも自分の中心軸を意識しながら動く癖を付けて下さい。歩くときでも同じ事です。自分の中心軸が垂直に立っているのを意識しながら、すーっと歩いてみて下さい。

半年も続ければ、体がいろいろ教えてくれるようになります。以前にお話ししたかもしれませんが、高校生の頃から、ジーンズの左の膝が必ず破れていました。35歳の時に右側の膝に痛みが出てきて10年間続いたのですが、思い起こせば、すでに右側膝関節の軸がずれていたから、膝を一杯に曲げたくなかったのです。だから、片膝を付くときには必ず左側膝をついていました。その繰り返しで左側の膝だけが必ず破れてしまったのだと、最近になって気づきました。

岸 元(きしはじめ)

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