[04]癖を修正する姿勢

ほとんどの人は、根本的な動きを教えて貰うことはありません。歩くときは、ここの筋肉を使って、このような動作をすると巧く歩けます。とか、走るときには、さらに別の筋肉をこのように使って走る、とかです。では、人はいったいどのように歩いたり、走ったり、跳んだりしているのでしょう。
初めて立ち上がった時を想像してみて下さい。何度も転びながら、それでも立ち上がり、一歩一歩足を前に出していきます。まさにトライアンドエラーで自らがつかみ取った、オリジナルの立ち方と歩行なのです。何処の筋肉をこのように使って、なんて考えてもいません。その後の走る、跳ぶは、その時の立ち上がり方(姿勢)と歩行の仕方が基本になって、さらに自らが作り上げていきます。歪んだ身体で作り上げた運動機能なのです。それを何歳になっても、同じように身体を使っていますから、どうしても癖のある動きになります。
ここでは、皆さんがすでに持っている身体の癖を、いかに少なくするようにするか、が課題です。すでに歪んでいる胸郭と頭部を無理なくどうやって支えて日頃の生活をするかです。左右バランスを崩しているのですから、足の荷重配分は左右のどちらかに偏っているはずですし、足底のバランスも偏りを生じているはずです。自分自身が中心だと感じている中心軸が違っているのです。ですから、自分で感じている中心軸を意識的に本当の中心軸に戻してやる必要があります。
ここで一番重要になるのが、前回お話しした大腰筋の使い方です。大腰筋というのは、通常は姿勢を維持するために使われている深層筋です。唯一、運動機能にも関係していて、立って片足を伸ばしたまま、上体を反らさずに前に上げるときに働きます。大腰筋は、背骨の胸椎の下部と腰椎の上部の前から、大腿骨の小転子と言うところに付いています。
大腿骨小転子というのは、股の付け根の内側になります。つまり、大腰筋を使うと言うことは、股関節の動きに関係するのです。股関節を上手に使い、左右どちらにも偏らない中心軸を自分の身体で自覚させていくのです。そうすると、正しく無理のない動きが出来ていきます。つまり、癖がなくなっていくのです。
ここで問題は、大腰筋をこれまで意識して使ったことがないことです。ある一定の姿勢でしか、大腰筋を使うことが出来ません。その姿勢作りが第一の課題になります。椅子に座って、体を反らさずに、両方の膝を軽く上げる気持ちになって下さい。お腹に力が入りましたか?股の間がむずむずするような感覚になりましたか?その姿勢が癖をなくす姿勢です。
岸 元(きしはじめ)

Follow me!