[15]病棟日記-ねむれねー-
1-3B病棟は6人部屋が6室。個室が4部屋有る。私の部屋は323号室でもちろん6人部屋だ。しかしベッドは一つ空いている。夜の消灯は9時だが若い人は消灯過ぎてもTVを見ているし、ご老人は8時半にはもう寝てたりする。
看護婦にとって大変なのは老人の世話だろう。夜中にトイレに行ったは良いが帰るべき自分の部屋を忘れてしまってウロウロしているおばあさん。スリッパの音がペタペタ。上の階ではガターンと何か倒れるような音。それに続いて看護婦の足早な足音。トイレを流す音がする。
同室のYさんはよく夜中に首の装具を外す。バリバリッというマジックテープをはがす音。なかなか刺激的な音である。Kくんは昨日からウォークマンを持ち込んでいる。テープが反転する音がカチカチ聞こえる。イヤフォンから漏れる音だろう。シャカシャカ音もたまに聞こえる。しばらくするとその音も消え、寝言にとって替わる。Kくんの寝言はなかなか見事である。長いしはっきりと何か言っている。喧嘩でもしている夢をみているのだろうか。
でもなんといっても今夜のメインは術後の初夜を迎えるMさんだ。こっちも覚悟してはいたがかなりウルサイ。看護婦相手にあーでもないこーでもない、と低い声でブツブツ言う。ウンウンうなるし、痛い痛いと独りごとも多い。手術したのだから痛いのは当り前だろー、おとなしくしてろってんだ。
でも奥さんがいないからまだマシだ。奥さんが居るともっと手が付けられない。甘えん坊だねMさん。食べちゃいけないって医師から止められているのに食べ物を買ってこいって奥さん困らせていたね。奥さん情けなくって泣いていたぞ。わかってんのか?
というわけで、今夜もねむれねー。
たまごや
※1997年10月30日記述