[05]柔軟な発想で深層筋を使う
前回は、大腰筋を使える感覚を身体で理解して貰うために、座って姿勢を作るお話しをしました。今回は、立ってみます。
この練習をする前に、一番大切なことがあります。それは、柔軟な発想です。私たちは生まれてからずっと誰に教わるわけでもなく、体を動かしてきています。特別に何らかの武道やスポーツをしている人達は、あるレベルでは身体の動かし方を習っているでしょう。しかし、それも自分流の動かし方が基本になって、その上に拾得した動かし方を塗り重ねているだけで、根本的な動かし方を習っているわけではありません。
ここでは、これまで使ってきた自分流の身体の動かし方を全く変えなくてはなりません。そのために、柔軟な発想が必要になるのです。正しい動きの基本になる姿勢をどのように作り上げて、それを維持するかが大切になります。
前回お話ししたように、まず椅子に座って身体を垂直にし、両方の足全体を上げるようにします。身体を垂直にしているのですから、足は絶対に上がりません。が、上げるように意識すると、お腹の奥に力が入るはずです。それで大腰筋を使っています。その感覚を自分の五感に置き換えて、納得がいくまで何度も繰り返してみて下さい。これで感覚がつかめない人は、立って片足を伸ばしたまま、股関節ではなくお腹を引っ込めるようにして前に上げてみて下さい。お腹の奥に力が入ったのが分かりましたか?
使えているかどうかを判断する方法があります。大腰筋を使ったまま、他の人に自分の手首を上から押さえて貰い、肩関節を軸にして腕全体を上げてみてください。大腰筋が正しく使えているなら、体重を掛けられていても、すっと腕を上げられるはずです。
では、立ってみましょう!人が姿勢を維持するときに、普通使うのが背部の筋肉です。背部を緊張させて、肩を後ろに引くように力を入れて、良い姿勢と思いこんでいます。ちょっと待ってくださいね。その姿勢だと、お腹に力が入らないでしょう!もう一度、大腰筋が使える姿勢を立ったまま作ってみて下さい。よく分からなければ、もう一度座って、両足を上げるようにお腹に力を入れてみて下さい。
身体を固定して、手足を動かすことは誰にでも出来ます。ここでは、足を固定して身体を動かします。ちゃんと使えているなら、身体は下腹部のところで前に引き出されるはずです。その感覚で、立ったまま大腰筋を使ってみて下さい。背中には力が入らないはずです。
よく言われるのが、「自分の尻尾を下に下げて、お尻の下側を締めて、お腹を引っ込めて」の姿勢になるはずです。お尻の下側と下腹部に力が入っていれば、第一段階終了!!
まずは、大腰筋が使えているかどうか、自分の感覚で掴んで下さいね。1週間もすれば、これが使えている感じなんだろうな、と分かるはずです。
岸 元(きしはじめ)