[20]手・足の指の使い方
中国武術に発勁という身体の使い方があります。ウィキペディアによると、発勁とは、中国武術における力の発し方の技術を意味すると冒頭にあります。この力の発し方は、「勁(運動量)を発生させ、接触面まで導き、作用させる」の三段階を経る。分かりやすく表現するために三段階に分節させているが、実際には三つの行程が同時に進行する。と書いてあります。
様々な技術があるようですが、手・足の指の12系を使う方法もあるようです。実際にこれらを使うと、姿勢の保ち方や力を出すときに非常に有効な方法なので紹介します。
まずは、足の指からです。親指と小指を使います。左右両方の親指で床を掴むように力を入れます。すると大腰筋を使い、胸骨が下がる姿勢になります。上肢に作用させるのであれば、上げている腕を下に降ろす動きになります。下肢の動きなら、膝を内側に回旋させる動きになります。両方の小指で床を掴むようにすると、大腰筋を使い胸骨が上がった姿勢になります。上肢に作用させるときには、下げている腕を上げる動きになります。下肢なら、膝を外に回旋させる動きになります。右の親指で床を掴み、左の小指で床を掴むと身体は左側に回旋します。逆だと右側に回旋します。
おもしろいと思いませんか!!足の指で身体全体をコントロールできるなんて!!しかも指から動きを始めると、必ず大腰筋を使えるんです。例えば、座っているときの姿勢の作り方で、両方の小指で床を掴むようにすると、胸骨が上がり背部がすっと上に伸びた姿勢になります。勿論、両方の肘は下に向きますから、肩に掛かる負担はありません。正座でも小指を屈曲させると、背中に力を入れなくてもすっと座れ、足がしびれにくくなります。
普通の歩行ではまず踵を着地させ、主に前足底で蹴って前に出ます。その時にもう片方の足を前に出すので、安定した時間はほとんどない状態になります。しかし、ナンバ歩きは、まず足の小指側を着地させ、拇指側に重さを移動させ、踵に重さを乗せます。重さが踵に乗った瞬間に、もう片方の足を前に出します。瞬間に左右の足の体重移動が終わります。ですから、常に体の重さは安定して足に乗るわけです。つまずいて転ぶことはほとんどなくなります。
ナンバ歩きのもう一つの利点は、上半身の捻れで生じたアンバランスで、左右どちらかの足に重さをかけ続けないと言う点があります。倒れながら移動する通常の歩行だと、左右どちらかの足に常に負担をかけてしまうのです。重さがかかっている足の膝関節は、必ず痛みを発症します。
岸 元(きしはじめ)