[32]イメージと動き(2)

前回は、手や足の指先を「無限の彼方」に届かすイメージを作りました。今回は、自分の身体の中心から動くイメージを作ってみましょう。意識するのは自分の丹田です。丹田の位置を膨らませるのではなく、引っ込ませるのです。
WBCでイチローが打てなかったときの動きと、決勝戦で2塁打を打ったときの動きに違いがあったのに気づいた方は多かったでしょう。一番大きな違いは、左足を蹴って動いたか、右足で引いて動いたかという点でした。
左足で蹴る動きは、腕で打ちに行くとそういう動きになります。どうしても打ちたかったのでしょう。そこを打ちたいイメージで動くと、腰を回転させてしまいます。腰を回転させるには、足で蹴るようになります。その結果回転だけでなく、右前に腰を押し出す動きも加わります。その後で肩を回し腕が動くので、身体を捻る動きが加わり、自分がとらえようと思ったタイミングを外してしまいます。
右足で引いた動きでは、右の軸が崩れません。右股関節の軸でスムーズに身体が回転します。身体に捻れがなくなるので、自分が思ったタイミングで腕の先が動きます。イチローはどんなイメージで動いているのでしょうね?
身体のどの部分を捕まれても、そこに意識を持っていってしまうとその力に自分の身体が反応してしまいます。その力に真反対に対抗する力しか出せなくなります。そんなときには、捕まれた所を捨ててしまいます。あくまで自分の身体の中心から動き、その力をそこに伝えるだけに集中します。あるいは、自分から手で人を掴むときにも手に意識を集中させるのでは、相手をコントロールできなくなります。中心からの力を波のように使い、手に伝えるとコントロールできます。
物を持ち上げるときに、ほとんどの人は腕を曲げて持ち上げようとします。身体を屈曲させたままです。物を掴んだら、後は手に掛かる重さを意識するのではなく、屈曲した自分の体を起こす動きに集中しなければなりません。そうすれば、腕の力を使わなくても物は持ち上がります。ただし、自分の体を起こす動きは正座して、お辞儀から元になおる動きです。お辞儀をしていて誰かに背中に乗って貰い、起きてみて下さい。決して背中にかかる重さに意識を集中させてはいけませんよ。
雑巾かけや窓拭きも同じです。拭くところに集中するのではなく、身体の中心から動いてみて下さい。身体全体が波のようにゆらゆら動きながら、その力が手の先に伝わり、肩の力を使わなくても床や窓は綺麗になるはずです。イメージは「中心から無限の彼方へ」です。
岸 元(きしはじめ)

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