エデンの園のアダムとイブは、禁断の木の実を食べると、裸である自分たちが急に恥ずかしくなり、イチジクの葉で前を隠したといわれます。聖書にもたびたび登場するイチジクは世界最古の栽培果樹といわれ、なるほどその幅の広い葉っぱは前を覆うにはちょうどいい形をしていると納得できます。
ところが、この前を隠すために使った葉っぱの言い伝えは国によって違うらしい。ギリシャやヨーロッパの多くの国はイチジクですが、これがフランスとなるとなんと葡萄の葉になるとか。さすがワインのお国ですな。
イチジクは「花が無い果実」と書くように、いきなり実がなり花が見当たらないように見えますが、じつは花はあの柔らかい実の中にあります。私たちが普通見る花とちがって、直接見えないために無花果と名づけられたのです。
花が実の中になるという特殊な形なので、受粉はイチジクコバチという専門職の昆虫がおこないます。面白い技としては、イチジクを早く熟すに、実の先端部分の赤いところにサラダ油などの植物油を塗ると熟期が早まります。成熟がすすむと実は大きく膨らみ、熟しきると先端がぱっくりと裂け甘い香りがあたり一面ただよいます。
イチジクが日本にはいってきたのは17世紀ごろで、中国渡ってきたことからはじめは「唐柿(とうがき)」といわれていました。子供の頃、イチジクの枝を折ると白い液が出て、それは「いぼ」に効く薬とか言われていましたが本当でしょうか?そのほかにも整腸作用、血圧降下、健胃、滋養、消化の促進などによく、二日酔いにも効き目があるとか。
日本では兵庫県を中心に和歌山や愛知などで栽培が盛んに行われ、温室により通年栽培も行われているようですが、7~8月の夏果、9~10月秋果が旬です。ちょうど今頃八百屋の軒先に美味しそうな無花果が店頭を飾ります。