健康保険は業務外の災害により受けた疾病に対して保障されるのに対し、労災保険は業務上の災害に対して支払われる保険です。
労災の対象となるのは業務上の災害、負傷、疾病、傷害、死亡のほか、通勤災害も含まれます。労災保険は使用者が加入する保険で、一人でも労働者を雇えば強制的に加入義務があります。他の保険と違って、保険料は事業主が全額負担します。
健康保険は被保険者の業務外の傷病等について保険給付を行うよう定めてあるので、仕事中など業務上の事由による傷病等に付いては健康保険は使用できません。業務外での疾病を労災保険で賄うことはあまりありませんが、業務上の疾病を健康保険で治療することはよくあることですが、これは保険金詐欺になりますので注意しましょう。
労働基準法では、業務上の事由による傷病などに付いて使用者は、
- 療養に必要な費用を負担し、
- 休業補償を行い、
- 障害が残った場合はその等級に応じた障害補償を行い、
- 死亡した場合は葬祭料並びに
- 遺族補償をしなければならない
と定めています。
しかも、使用者側の無過失でも責任を問われます。つまり、業務上の事由による被災労動者は、事業主にそれらの費用を請求することが出来るわけですが、そうなると事業の経営も支障をきたしかねません。ところが、これらの補償について労災保険等により災害補償される場合はその範囲で使用者はその補償の責を免れるとなっています。
つまり、本来は業務上の災害補償は使用者が行なうべきものなのですが、労災保険という制度を利用することにより莫大な補償を安い労災保険料でまかなうことができるわけです。
しかし、企業の安全な経営を補足する労災保険ですが、実は企業は労災保険を使うことをあまり好みません。業務上の災害が発生すれば労災を適用せざるを得ないのですが、労災保険からの給付はすぐ出か代わりに企業に厳しい調査が入ります。どうして労災適用になるような災害が起こったか、原因を追求され、改善を要求されます。企業としては当然の役目なのですが、あまりにも追求が厳しいので使用者が労災を使わず自社の経費で済ませてしまうこともあります。もちろん十分な給付がされればそれでも問題は無いのですが。
なお、労災保険制度は労働者一人一人に掛けるものではなく、事業所自体に掛けるものです。ですから健康保険のように個々に保険証はありません。また被保険者が労災か健康保険かを選ぶこともできません。