労働条件の不利益変更は合理的な理由が無いと認められないとされていますが、では労働条件はどこで決められるのでしょうか。
本来、労働条件は雇用契約書で個別に決定されるものです。臨時労働者や期間労働者、契約社員など有期雇用者には雇用契約書がありますから、この書面で労働条件が決まります。したがってこのような有期雇用者の場合は労働契約と就業規則で労働をコントロールされることとなります。
ところが正社員の場合は雇用契約書はありません。この場合は就業規則が雇用契約書に代わる書面となります。そして正社員は就業規則のみによって労働をコントロールされることとなります。
労働条件の不利益変更は認められないという場合の労働条件は、イコール就業規則に書かれている労働条件となります。だから就業規則を労働者の不利益になるように変えることはできないとされるのです。正社員のかたはもっと就業規則に敏感になりましょう。
有期雇用者の場合、雇用契約書と就業規則の内容が異なる場合はどうなるのか?
労働契約と就業規則の規定が違う場合は、就業規則が優先します。たとえば労働契約で一日の労働時間が6時間、就業規則で5時間と決められている場合は就業規則の5時間が労働条件となります。
ところで、労働条件を不利に変更してはいけないという法的根拠はどこにあるのでしょうか?労働基準法には不利益変更の禁止は謳っていません。
どうやらこれは最高裁の裁判例によるものらしいです。裁判例(最高裁判所判決平12.9.7 みちのく銀行事件)では、就業規則の不利益変更について、以下のように判断しています。
「就業規則の変更により労働者の既得の権利を奪い、労働条件を一方的に不利益に変更することは、原則として許されない。」
この判例では、同時に「合理的なものであれば不利益変更を認める」ということにも言及しています。