[26]意識と身体

一体、私たちは普段どのように動いているのでしょう。子供の頃から作り上げられた、動きの試行錯誤の結果とその結果でできた意識の中で行動しているはずです。自分の体のバランスが悪い事に気づいている人も何人かいます。しかし、ほとんどの人達が自分はまっすぐに立っていると思いこんでいます。そして、バランスが悪いことで起きてしまった自分自身の身体の痛みは、その部分が弱ったから起きたことだと考えています。だから、バランスが悪くて、その部分が自分の重さで疲れ切って生まれた痛みなのに、その部分をさらに鍛えようとします。
私の失敗例をお話しします。もう20年近く前のことです。腕相撲の手の組み方で、片手で相手を投げる練習をしていたときのことです。その頃は、まだ外側の筋肉で十分動けていましたから、今の身体の使い方とは全く違い、腕の力を使って倒そうという意識で動いていました。腕の力を使うのですから、うまくいくはずはありません。それでも、繰り返し何度も何度も、1時間くらい動いていたでしょう。
腕の力を使い右手で相手を自分の内側に動かそうとした場合、左側に身体をひねり、左側に身体を倒して右腕の力を内側に使おうとします。よほど腕力があれば別でしょうが、同じくらいの腕力で力比べをしている状態です。私の上腕二頭筋の短頭部(力瘤の内側)が極端に疲労して、1週間後には肘の痛みを発症しました。内側に前腕を捻ろうとも動いていましたから、いわゆるテニス肘の状態にもなっていました。テニス肘を治す調整を自分でしていましたが、いっこうに痛みは取れません。それどころか、肘の最大伸展と最大屈曲できない状態になりました。痛みは1年くらい続きました。痛みを感じなくなった今でも、肘をまっすぐに伸ばすことも一杯に曲げることもできません。この時に今の身体の使い方を知っていたなら、こんな事にはならなかったはずです。
つまり、身体のどの部分からどういう力を外に出したいか、と言う意識が子供の頃から試行錯誤して作り上げた動きだけの知識でしかないなら、それはとんでもない間違えだと言うことです。もっと別の知識があるなら、その意識は変えられるはずです。60代以上の人の中には、もう年を食っているのだから、そんなことは出来ない。と思いこんでいる人もいます。
しかし、意識を変えるのに年齢はほとんど関係ありません。それに使えば使うほど上手になるのですから。合気道のある先生が亡くなる間際に、「今が私の動きは一番充実している。」と言われたそうです。(言葉は少し違うかもしれません)その通りだと思います。いつでも自分が傷めた身体を癒すことが出来るはずです。
岸 元(きしはじめ)

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  1. [27]意識と身体(2)

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