[03]どうして癖があるといけないの?
~首がすわる頃には~
驚くことに、3ヶ月の首がすわる頃には、すでに癖が出来てしまいます。子供の頃には、全く癖などなく、身体は正常だと思っている人が多いでしょう。体のバランスを崩すのは、何かの衝撃を受けたりとか、運動で無茶な使い方をしたときに起きるものだと思っている人がほとんどです。しかし、日常のほんの些細な動きで、人の身体はバランスを崩すものなのです。
赤ちゃんが仰向けで寝ているときに、親がいる方向がいつも同じとか、窓から明かりが差し込む方向が同じとか、いろいろな理由で左右どちらかに向きたい方向が決まります。同じ方向を見ようとしますから、頭を動かす頭部から肩胛骨内側に伸びている筋肉群が右か左のどちらかが緊張しっぱなしになります。これが身体の癖になって一生の動き方の癖になるのです。防ぐ一番良い方法は、3ヶ月までおむつをしないで自由に動くのがよいそうです。足と腰を固定しないで自由に動ければ、頚部の筋肉群だけ緊張するということにはならないようです。
では、寝ているときに出来た頭を支える筋肉群の偏りで、次にどんな影響が出るのでしょう。それは、立ち上がるときに始まります。
基本的に、直立するには身体の一番大きな、一番重量のある箇所をどうやって支えるか、が重要なポイントです。幼児の頃は頭です。頭部を支える筋肉群は、乳児の頃にすでに左右のバランスを崩しています。頭が傾いているのです。当然、身体の別の部分でバランスをとらないと、頭を直立できません。その別の部分が柔軟な胸部になります。
ある程度身体が大きくなる頃になると、肋骨で囲まれた胸部を直立させるのが、次の重要なポイントになります。例えば、頭を支える筋肉群の右側がより緊張しているとしましょう。これは、乳児の頃に一生懸命に右側を見ようとした証です。頭は左に傾いています。左に傾いた頭を支えるには、右の肩を下げれば頭は直立します。その結果、胸部は右側に倒れ、右側を前によじる形になります。当然、胸部の形は右側が凸の状態で側湾するので、腰部にかかる上体の重さは右側が重くなります。その結果、なるべく左右の足にかかる重さを均等に調整するために、骨盤の歪みが始まります。
重さの偏りが、少なければこれらの補正も小さい範囲で済みます。しかし、それだけ補正しても足りないときには、足にかかる重さは、右側の方が重くなります。偏った重さで、身体全体を支える筋肉の使い方も偏りますから、一部の筋肉の疲れから、腰痛、肩こり、下肢の痛み等を起こすことになるのです。
岸 元(きしはじめ)