ヌカ(糠、ぬか)は、もともとは穀物を精白した際に出る果皮、種皮、胚芽などの部分のこと。日本ではヌカといえば玄米を精米したときに出るカスをヌカというのが普通です。
玄米には茶色の皮と胚芽が含まれていますが、白米にはこれがありません。特に胚芽は芽吹きのパワーが詰まっており栄養分も豊かです。これをカスとして捨ててしまうのはもったいない話。栄養のあるヌカは家畜の餌になりますし、漬物などの床として使うなど、日本人の生活に密着した利用方法があるのもまた日本人の知恵でしょうか。
米のヌカは米糠(コメヌカ)ですが、同じように大麦を精白した時に出るものを「麦糠」、小麦の糠は「フスマ」といいます。いずれも栄養分豊かで、家畜の餌や肥料としますが、圧倒的に活躍するのがやはり米糠です。
畑に使う「ぼかし肥料」は米糠を加えて発酵させます。米糠は栄養分があるだけでなく、日本土着の微生物が豊富についているのでしょう。外来の大麦や小麦ではうまくできないのです。肥料は米糠によって最上のものとなります。
またヌカミソ漬けにも米糠は欠かせません。米糠に塩と唐辛子を入れ、発酵させたヌカ床で作られたヌカ漬けは日本人の食卓には欠かせないものでした。昔はどの家庭にもヌカ床があり、それぞれ家庭の味をかもしていたのですが、今は市販品が多くなり、ヌカ床のある家庭は少なくなったようです。ヌカ床のことをぬかみそとも言いますが、味噌が入っているわけではなく、ヌカ床がミソのように見えることから「ぬかみそ」といいます。
ヌカには油分が多く含まれており、昔は洗剤としても広く用いられてました。米糠に含まれるタンパク質が界面活性剤の役割を果たしていたのです。そのほかにも布にくるんで床を磨くのにも使われていました。まさに生活に密着していた米糠君なのです。
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