[33]イメージを広げる
私たちは、子供の頃から指の使い方、歩き方、立ち方など、一つずつ自分で練習を重ねながら拾得してきています。机の上に置いてあるコップを手で掴み、口にもっていき中に入っているコーヒーを飲む。この動作も、一つ一つ考えなくても総合的に動きます。錐体外路系の運動機能と呼んでいます。これは繰り返しの練習の成果なのです。つまり、明確なイメージが出来上がっている場合にできると考えてみましょう。
では、腕相撲をします。ここで、あなたは相手のどこにどのように力を加えようとイメージしていますか?相手の手の甲が台に付けば、あなたの勝ちです。逆に付けられてしまえば、あなたの負けです。さて、考えてみて下さい。勝ちたいですか?それとも、負けたくないですか?
勝ちたいときと負けたくないときでは、身体の使い方が全く違います。勝ちたいときには、自分の腕を内側に強く倒そうと意識して、そのように動かそうとします。負けたくないときは、その場で動かさないような身体の使い方をします。でも、両方とも相手の力が強ければ負けてしまいます。体の大きい、力の強い人が一番強いと言うことになりますよね。それでは、おもしろくはありません。
自分の力だけで相手に勝とうと思わずに、相手の手に触れたとき、相手の中に意識を入れて相手の中心をつかんで下さい。あるいは、相手の中心(へその下)を取り囲んだ大きな円をイメージで作って下さい。さて、相手の触っている手を動かすのではなく、相手の中心を動かすように腕を倒して下さい。肩にも、二の腕にも力を入れないで相手を倒せましたか?
明確なイメージができていれば、例え相手が両手でやってきても、立ち上がって横方向から押してきても、座ったままの姿勢が崩れませんし、自分の腕を倒すことができます。
横に足を開いてもらい、踏ん張って動かないように立ってもらいます。肩を押して相手を動かす方法は何度も話ししましたが、ここでは肩に触れたときに、相手の中に入り中心を取りましょう。その中心を動かすイメージで動いても、相手をすーっと動かせます。
両手首をつかんでもらい、その時に相手の中心を取るか、相手の中心を取り囲む円を作ります。そのまま身体を回転させて下さい。相手は自分を中心とした円上を動かされてしまいます。
明確なイメージができると、自分の中心軸が全くぶれないようです。おまけに脱力が簡単にできるようになります。これは、人対人でなくても、ものでも同じです。コップを持ち上げるとき、思い物を持ち上げるとき、自分の身体は同じように脱力し、中心から動くようになります。もっと大きなもの、地球とつながってみましょう!
岸 元(きしはじめ)