[15]姿勢の仕組み

人は実に微妙な姿勢制御をして生活しています。私が最近体験したことをお話しします。
重量物が倒れないように右手で上に持ち上げるように支えながら、左手で下に落ちたものを拾い上げようとしたときです。右の第7肋骨頭に違和感がありました。私の癖姿勢は、左回旋していているので、右足に重さをかけ、胸郭(肋骨の籠)は後ろから見ると、右が上に上がり、左が下がっています。前述の姿勢では、私の癖をさらに強めるように力が掛かりました。第7肋骨頭は、頭方に上げられていました。痛みはテーピングをするまで、1週間続きました。
その時の私の姿勢は、右肩を極端に下げ、右足にかかる重さはさらに重くなって、足底の重さのかかる箇所は外側、踵部分になりました。痛みから少しでも逃れる姿勢を自然にとっていました。その結果、右ふくらはぎの緊張、右側腰部の痛み、右肩のこりを感じるようになりました。
第7肋骨頭を下方に下げるようにテーピングしてから4日後、両肩のバランスは元に戻り、足の緊張も腰痛も肩の緊張もなくなりました。
その間、右腕をどのように使っていたかというと、身体の左側回旋の癖をさらに強くしていたので、右肩を前に出し肘を体側よりも後方に引くようにして物を持ち上げていました。この動きでさらに左側回旋を強くしていったと思います。
私たちは、これと同じ様なことを繰り返しながら日常生活を送っています。何かのきっかけで元々の自分の癖を強くして、それをカバーするためにさらに姿勢を崩していっています。取りあえず二本足で立つ、あるいは痛みから逃げるために作る姿勢を補正と言います。この補正を繰り返しながら年齢を重ねているのです。ただ、補正はいつまでも続くのではありません。限界があります。その限界が来たら、動けないような痛みで身体が訴えるのです。これ以上は補正が効かないよ、と。
直立して右肩が下がっている人に腰痛を起こさせたいのであれば、右腕を肩の高さに上げて親指を下に向けて貰います。その腕を下に向けて誰かに力を掛けてもらい、肩の高さに腕を維持して貰います。限界まで力を掛けてやると、数週間後には立派に腰痛を起こします。治したいのであれば、左腕で上記のことをやり、さらに右腕を上に上げ、手のひらが上を向くようにして小指をさらに上に向けます。腕全体を前から下に降ろすように力を入れ、誰かに降ろす力に抵抗して貰います。
自分の身体にどのような癖があり、どんな使い方をするとさらに姿勢がくずれていくのかを知っていなければなりません。日常の腕の使い方で、自分の癖をさらに強めていくのを理解してもらえましたか?
岸 元(きしはじめ)

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