ある平日の昼間、私は暇を持てあまして家でゴロゴロしていた。連日家でゴロゴロが続いていたので、ゴロゴロにも飽きてしまい、どこかへ出かけようかと考えながら、『オーパス』の存在を思い出す。オーパスとは、オーネットの有料サービスのひとつで、支社のコンピュータで写真や略歴を検索できるシステムである。
1回90分で3万円(だったと思う)で、入会したときに1回無料のチケットをもらっていたので使わなければもったいない。そう思いながらチケットを見ると有効期限が切れている。しかし、担当者に尋ねると利用できるとのこと。予約制だが、平日の昼間なので空いており、すぐに支社に出向いた。
支社に行くのは3度目だ。別に悪いことをしているわけではないはずなのに、道行く人にオーネットに行くと思われてはないだろうか?と奇妙な羞恥心が頭をよぎる。パーテーションで仕切られた商談ブースに通され、使い方の説明を受ける。コンピュータは21インチ程度のディスプレイのみでキーボードはなく、マウスで操作。携帯電話や筆記具の持ち込みは不可で、バッグは預かっておきますと言って取り上げられた。
重要な個人情報なので、扱いはまずまず慎重なようだ。自分の会員番号を入力してスタート。居住地と年齢と年収が検索項目だったと思う。ヒットすると一覧で小さな写真が出てきて、さらにクリックすると本人の写真2点、自己PRのコメントほか身長、体重、趣味、婚歴、子どもの有無など主要なプロフィールが出てくる。写真はかなりクリアなもので、サイズも大きい。ここで気に入った人10名まで申し込みができる。
他人の顔やプロフィールを見るのはかなりワクワク、ドキドキとして思いのほか楽しいものだ。が、楽しんでいる場合ではない。私は生涯の伴侶を探しているのだから。で、自分の条件は棚に上げて、主に居住地と容姿で選んでしまうと、申し込みをしてみようかと思う人は、私より若い年齢の婚歴なしの男性になってしまった。
どう考えても無理目な選択だが、無理に妥協することもないかと思い、5名に申し込みを決定。時間が余ったので、興味本位で検索を続ける。みんなどんな暮らしをしていて、どんな思考で、どんな結婚観を抱き、今は何をしているのかなぁ、と想像を巡らせながら90分終了。暇つぶしとしては有意義であったが、結婚につながりそうな予感は皆無のまま、支社を後にした。
本城愛子
投稿者: 本城愛子
[20]活動のピークはわずか5ヶ月間!
私が推測するに、オーネットの活動が活性化するのは、入会してから数週間経った頃から全国版会員誌(入会2?3ヶ月後)に掲載された後の1ヶ月あたりであろう。つまり、5ヶ月間程度がピークで、その後は期待も薄れ、紹介状の数も減り…という憂き目?!が待っているようだ。支払ったお金の目減り具合もそれと比例しているようで、5ヶ月間でおおかたを使っている。
5ヶ月後に、やっぱりオーネットで結婚相手を見つけるのは無理なのかなぁ、と嘆いたところで時すでに遅し。どの道、退会返戻金も微々たるものだし、異性と出会う機会もないのだから、このまま加入していようかな…。確固たる意識があるなしは別として、そう思いつつ、半ば惰性のように在籍している会員が多いのではないか。そう考えてみれば、何度も言うようであるが、実によくできたシステムだ。(いまだ再婚できていないから恨めしげに言うわけだが)
それはさておき、私はしばし日本を離れ、子連れで仕事仲間少数名と某国に海外旅行に行ってきた。離婚後、初めての海外であり、今日は帰国したばかりである。独身時代はバックパッカーまがいの旅もいとわないベンチャーだった私も、幼子を抱えて男手もないとなると、旅行会社のツアーをよしとし、不本意ながら案外保守的な旅行であった。しかしながら、仲間と異国を見聞し、ハイグレードなホテルに泊まり、愛する息子と戯れるひとときは快適であり、それはそれで楽しく、いいリフレッシュになったと思う。
しかしだ。同行者に私と同じ年の息子を持つ仕事仲間(男性)がおり、その家庭は両親揃っての参加である。私は言い様のない不憫さと敗北感を感じずにはいられなかった。しかし我が息子はパパが居ないことなど意に介さず、全く悲壮感ない様子でいつも通り明るく無邪気な立ち居振る舞いだ。それがせめてもの救いだろう。
また、仕事仲間の子どもは非常に品行方正で、両親の手を煩わすことなく終始おとなしく過ごしていた(仕事仲間自身がかなり真面目な性格であるから親に似たのだろう)。円満家庭に育つ品行方正な他人の子どもと、片親家庭に育つやんちゃすぎる子ども…。先行きが不安ながら、それでも我が子が愛おしいし、あんな家庭はつまらないだろうと思ってしまう。その考え方が今日の境遇を招いたのだろうが。
本城愛子