[26]闘う男

あなたがたは闘っている。途方もなく闘っている。
男とは闘うものだと人はいう。男は、そうやってこれまでもずっと闘いつづけてきた。
女をめぐっては争い、仕事では競い合ってきた。
あげくの果てに男はいう。血まみれになっていう。
「俺は上にいきたいんだ」と。
あなたがたは数字を上げなければならない。
収入を上げなければならない。
成績を上げなければならない。
いつも、性急に結果が求められる。
どんなときも、仕事のことが頭から離れなくなる。
もし、逃げたりしたものならあなたは思うだろう。
「逃げるな! 意気地なしめ!」ってね。
あなたはいつも血を流している。体中、血まみれになっている。
成果を、数字を上げるために、心も体も悲鳴をあげている。
それでいて、苦しむことが財産だという。
どうしてそう思う? どうして苦しむことが財産だと?
あなたがたは自らのポテンシャルを、才能を殺しているよ。
あなたが賢者なら、どうして結果を残そうとする心が、急かされる心が、財産などといえる? どうしてそんなことが――。
あなたは自らのポテンシャルを削ぎ、体を壊しながら仕事をしているんだよ。苦しむエネルギーが、急かされるエネルギーが、着実にポテンシャルを削いでいる。
苦しみ、金を得ることが財産などではないよ。苦しむことによってどうなるか、それを理解することが財産なんだ。
自らの才能を殺しながら、一時的に数字と結果をのこして、それでどうするつもり? それが、あなたを破壊しているんだよ。
賢明な人なら、そんなことはしないよ。彼らは、ポテンシャルを上げることこそ、早道だということを知っている。この道だと、日に日に才能が開花するからね。
はじめこそ、急かされた心のほうが早いだろう。だが、やがて着実に追い抜いていくよ。なにより、こちらのほうが楽しいに決まっている。
リラックス、充実、穏やかさの実りがそこにはある。
楽しむこと、好きなことをすること、心のままに在ることが最速だよ。おもうがままに揺られてね。
でも、きっとあなたは相変わらずいうよ。血まみれとなっていうよ。
「負けるもんか! 逃げるもんか!」ってね。
それで?
それでどうなるの?
勝つも負けるも、闘うも逃げるも、結局はシーソーのおなじ糸に結ばれているよ。闘うことが良くて、逃げることが悪いなどとどうしていえる? 闘うことがいいなら、逃げることだっていいだろうに・・・。
闘うことがどうしても好きなら、無理に止めはしないよ。もちろん、闘うことも大切だからね。
それにしてもあなたは血を流しているよ。今もずっと、とりとめなくね。血を流しながら、リラックスを求め、癒されようとしているんだから世話がないよ。
だって、不可能だよ(笑)。
それより、まずは血を止めたらどう?
ポテンシャルを上げる道をえらんだら?
椎名蘭太郎